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おすすめ資料
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2024/07/19

絵で読む*広島の原爆

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絵で読む*広島の原爆 
著者:那須正幹/文、西村繁男/絵 
出版社:福音館書店  
請求記号:319/ナ


 今年ももうすぐ8月6日がやってきます。

 広島出身の私にとって、子供の頃から原爆というものがつねに身近に存在していたように思います。戦後広島で育った方の多くがそうであるように、小学校の頃から学校や地域で、折に触れて原爆について多く学んできました。当時の写真や、被爆者の方の話などを見聞きするたびに、子供だった私には、それらはただただ恐ろしく感じたことを、今でも覚えています。

 昨年広島に帰省した際、小学生の息子と一緒に何十年かぶりに原爆資料館を訪れました。資料館を見学したことをきっかけに、息子にも原爆について知ってほしい、大人になった自分自身も改めて原爆を知りたい、と思っていた時に、この絵本を知りました。初版は1995年だそうです。

 著者の那須正幹さんといえば、ズッコケ三人組シリーズがあまりにも有名ですが、広島で生まれて3歳で被爆をした那須さんは、生存者の証言をもとに当時の広島の町の様子や人々の暮らし、広島市内の被爆状況、そして原爆の開発から投下にいたるまでの歴史的背景、核兵器の原理、放射線障害など、風化させてはならないテーマをこの本の中で多角的に書いています。また絵をてがけた西村繁男さんは、実際に1年近く広島に住んで町を取材し、たくさんの証言や資料を集めて、複雑な内容を子どもたちにも分かるように丹念な絵で描いています。

 この本は、個人の被爆体験というよりも、あとがきにあるように原爆の全体像が描かれており、一貫して上空から俯瞰した視点で、広島の町の様子が描かれています。ページをめくる度に見開きに大きく広がる町の光景は、まさに広島の歴史を絵で読んでいるかのようです。

 最後は、以下の文で作品が締めくくられています。

毎年、毎年、くり返し、くり返し、わたしたちは、あの日のことを思い出そうではありませんか。
たとえ被爆の体験がなくても、あの日、広島でおこったことを記憶して、絶対に忘れないことが、残された者のつとめだと考えるからです。



 那須さんは被爆者でありながらも、その事実からできるだけ離れたところから客観的に原爆について書かれている分、この最後の言葉には胸に響くものがあり、読み手が各々の立場で、知ることや考えることの大切さを教えられているように感じます。


こちらは絵本ではありますが、対象は、小学校上級~大人まで、となっています。是非この夏、手に取ってご覧頂ければと思います。


09:00
2024/06/20

日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ

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日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ

著者:森下 典子
出版者:新潮社
請求記号:791.0/モ
資料コード:612042171他

母方の祖母は、生前お茶を習っていました。
お稽古や茶会に連れて行ってもらったり、祖父母の家に遊びに行くとお茶を点ててもらうこともあり、子どもの頃からお茶をどことなく身近に感じていました。

祖母の形見の茶器や道具の一部を母と共に譲り受け、私も自宅や実家でたまにお茶を点てて楽しんでいます。
あくまで自己流ではあるのですが、祖母の形見の茶器や道具、お菓子の用意をし、お茶を点てる。
心がすっと軽やかに、和やかになる時間です。

祖母が亡くなってから、この夏で七年。
仕事帰りの図書館で、実写映画のDVDと併せて手に取りました。

大学時代に、母からの勧めで従姉妹とお茶を始めることになった典子。
「タダモノではない」と噂の母の知人で茶道の先生でもある、武田のおばさんの指導を受けることになります。

がんじがらめの決まりごとの数々、せっかく覚えた作法も、季節や道具によって目まぐるしく変わる中で、疑問や葛藤を抱きながらの日々。
お茶を始めてから25年の間、自分の居場所を探し続け、失恋、父との別れという悲しみにも直面します。
しかしお茶の稽古を続けていくなかで、堅苦しさのその先にある自分なりの自由と生きる喜びを少しずつ見出していき、お茶の魅力に気付き、次第に惹かれていきます。

季節のうつろいを、今この一瞬を、五感を使って全身で味わうこと。
頭で考えずに、今目の前にあることに向き合い続けること。
生涯を通じ、日々が勉強であること。
そして今ここにいる、私は私のままが良い、長い目で今を生きるということ。
典子のお茶の先生である、武田先生の深い名言の一つひとつにも考えさせられます。

著者の森下典子さんは、本書のまえがきで次の様に述べています。

「世の中には、「すぐわかるもの」と、「すぐにはわからないもの」の二種類がある。
すぐわかるものは、一度通り過ぎればそれでいい。けれど、すぐにわからないものは、……何度か行ったり来たりするうちに、後になって少しずつじわじわとわかりだし、「別もの」に変わっていく。
そして、わかるたびに、自分が見ていたのは、全体の中のほんの断片にすぎなかったことに気づく。「お茶」って、そういうものなのだ。」

この一冊と出会い、忙しない日常のなかで見過ごしてしまいそうなことを、改めて教えてもらえた気持ちです。

黒木華さん、樹木希林さん、多部未華子さん出演の実写映画も下記に紹介しています。
とても美しい作品で、著者の森下典子さん自ら、茶道関連のアドバイザーとして全面的に撮影に参加されています。

ぜひ併せてお楽しみください。


 


12:00
2024/06/20

坂本龍一選 耳の記憶 前編

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タイトル:『坂本龍一選 耳の記憶 前編』(CD3枚)
請求記号:C7CQ/サ 
資料番号:63031714-6



 2023年3月に惜しまれつつ71歳で亡くなった、音楽家坂本龍一氏のクラシック音楽遍歴を幼少期からたどるアルバム。

 雑誌『婦人画報』に2011年5月から2013年4月まで掲載された、全24回のクラシック音楽にまつわるエッセイと、それぞれの曲のイメージに合わせて写真家の田島一成氏が撮影した写真が添えられてリーフレットとなり、さらにそこで紹介された音楽がCDとして味わえるというもの。聴いて、読んで、見て楽しめるアルバム。

 このアルバムにはおすすめポイントが大きく3つある。

 1つ目は曲にまつわるエピソード


幼いころから母親と母方の叔父が所有していた数多くのレコードでクラシック音楽に親しんできた坂本氏、その後ピアノを習うようになって、実際に課題で練習した曲や作曲に関心を抱かせてくれた曲のことが綴られている。
 特に、第1回では氏の音楽の原点ともなったバッハの『インヴェンション第1番』をとりあげ、

「“課題曲”なんて、ふつうは好きでなかったりするものですが、僕はとても嬉しかった。そのよろこびの感覚は、今も自分の体の中に残っています。好きになったのは、たぶん僕が“左きき”だったということが大きかったと思います。(中略)左手が右手以上に重要な役割をもって書かれているのが、子どもながらにすごく嬉しかった。(中略)この曲と出逢ったよろこびは、『生涯の友』に出逢った、真のよろこびといっていい」

と記している。このバッハとの衝撃的な思い出が小学2年生か3年生ころだったというのだから、坂本少年の豊かな感性と早熟ぶりがうかがわれる印象的なエピソードだ。

 2つ目は曲の構成


前編ではこのほか23曲が紹介されており、ハ長調から順に24の調順に構成されている。第3回のモーツァルト『ピアノ協奏曲第20番 二短調』では、この曲もモーツァルトの『レクイエム』も

「彼にとって二短調は特別な調で、彼が二短調で書くときは、必ず悪魔的な側面が顔を出す」

と指摘している。確かに、曲には題名の後に○長調、もしくは△短調が記されている。調によって、曲のイメージがあるのだろう。あまり意識して聞いてこなかったなあ・・・

3つ目は彼の聴いてきた演奏者もしくはおすすめの演奏者の紹介


クラシック音楽は同じ楽譜を演奏しているはずなのに、指揮者や演奏者によって受ける印象が大きく異なるところに最大の魅力があると思う。それによって、音源さえ残っていれば古今東西にわたり幾通りも聴き比べというぜいたくな楽しみができるし、自分の「好き」を見つけることができる。

 エッセイの中でも、彼が一番初めに出逢った演奏者や、その後たくさんの聴き比べをしてたどり着いたおすすめの演奏者を紹介してくれている。一つの曲からたくさんの出逢いに導いてくれているのだ。

 このアルバムには『後編』(6303715-5)もあり、『後編』では、同雑誌に2013年5月~2014年10月、途中闘病期間を挟んで2017年11月~2018年4月までの全24回が掲載されている。こちらもぜひ!

Ars longa vita brevis.「芸術は長く人生は短し」
          ―坂本龍一氏が好んだヒポクラテスの言葉

 


09:00
2024/05/25

土を喰らう十二ヵ月

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タイトル 『土を喰らう十二ヵ月
出版社 バップ
資料コード 630336802
請求記号 D7AF/ツ


時間に追われ生活している私にとって「ていねいな暮らし(日々の何気ないことに手間と時間をかける暮らし)」は憧れの生活です。

この作品には私の憧れるそんな静かな時間がながれています。

作家のツトムは、人里離れた山荘で悠々自適な一人暮らし。
自然の恵みに感謝し、自ら料理をし、季節のうつろいを感じながら原稿をしたためる毎日を送っています。
ツトムには東京で編集者として働く恋人がおり、彼女はおいしいものができる頃にあわせて山荘を訪ねてきます。ツトムにとって二人で一緒に旬の素材を味わう時間は格別な時間です。
そんな山村ライフを楽しむツトムですが、13年前に亡くした妻の遺骨を未だに納骨できずにいます。また、ツトム自身も病に倒れたことで死をより身近に感じ、恋人との関係にも変化がおとずれます。

この作品は、「土を喰う日々ーわが精進十二ヵ月ー」(水上勉著)が原案となっています。
映画監督の中江裕司氏が、雪深い土地を求めたどりついた白馬の廃集落で撮影されました。古民家を改装し、畑を耕し野菜を育てるところから始め、二十四節気に寄り添った撮影は一年半にもおよんだそうです。

作品に登場する四季折々の料理は、料理研究家の土井善晴さんが担当。
土井さんはインタビューで「人間の都合だけでなく、素材と料理にあわせた時間を共有する。人間の勝手ではできないというあたりまえのことが今は忘れられがち。料理がおいしいのは一回だけ」と語っておられます。
なので、本番の料理は一回しか作らず、盛り付けから食べるシーンまでを一気に撮っていたそうだです。

「生きること、生活することは体を使うこと。体を使えば腹もへる。腹がへれば飯もうまい」
あたりまえのことですが忘れがちなこと、真の豊かさとはなにかを考えさせられました。

映画のテーマは、日常や生と死というすごく深いことなのだと思いますが、私はもっぱら料理と景色に魅了されました。

季節によって移ろう美しい信州の四季、ご飯の炊ける音、囲炉裏の炭の音、鳥の鳴き声や虫の音、風の音、山の水の音、積もった雪を踏む音など、自然の音がとても心地よい作品です。
そして言わずもがな、作中のご飯のなんともおいしそうなこと。
私も季節の節目節目にツトムのところに通い、おいしいご飯を楽しみたい!!そんな気持ちにさせられる作品でした。

こちらは関連本の著作の所蔵もあります。


タイトル 「土を喰う日々ーわが精進十二ヵ月ー
著者 水上 勉
出版社 新潮社
資料コード 310353488

タイトル 新編 水上勉全集13巻「土を喰う日々ーわが精進十二ヵ月ー
出版社 中央公論社
資料コード 610295462

タイトル 「土を喰らう十二ヵ月
著者 中江 裕司 
出版社 朝日新聞出版
資料コード 510788936

タイトル 「土を喰らう十二ヵ月の台所
著者 中江 裕司 土井善晴
出版社 二見書房
資料コード 510787877


09:00
2024/04/27

夜空にひらく

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タイトル:『夜空にひらく

著者:いとうみく

資料コード:612352782

請求記号:Y913.6

 

YA 」という言葉を聞いたことがありますか?

YA」とは、「ヤングアダルト」の略で、中学生・高校生の10代のみなさんを表している言葉です。

稲城市立図書館では、大人になりつつある10代向けのYA図書を多数所蔵しています。

 

今回は、そのYA図書の中から『夜空にひらく』という本を紹介したいと思います。

著者は児童文学作家のいとうみくさんです。

いとうみくさんといえば、多くの作品が課題図書に選ばれているので、お名前を聞いたことがある方も多いと思います。

 

この本の主人公は、アルバイト先で暴力事件を起こし、家庭裁判所に送致されたのち試験観察処分となった、鳴海円人という17歳の少年です。

円人の境遇はけっして恵まれてはおらず、幼い頃には母が家を出ていき、その後祖母と二人暮らしの生活を送ってきました。その祖母とも折り合いが悪く、人を信じる事ができません。

試験観察処分となり、円人は補導委託先の煙火店(花火の製造所)で住み込み生活を送ることになります。

煙火店での共同生活を送るにつれ、居場所を見つけていく円人。

 

不器用だけど決して悪人ではない主人公が煙火店での居場所を見つけていくと同時に、周りの大人たちの事情や心情が絡み合い、読み手として考えさせられます。

 

円人の誕生日のシーンはとても印象的で、この本を象徴するシーンでもあります。

「花火は打揚げたら約6秒。観てもらえるのは一瞬だ。けど、心(ここ)に残る」

生きていく上でとても大切なことを学べる物語でした。

 

物語終盤で、散りばめられた伏線が一点に収束されていくさまは、円人が愛されていた証拠にあふれています。

補導委託という難しいテーマですが、YA世代にも読みやすく、手に取りやすい一冊です。

 

「児童書ではものたりない」という方や「大人の本はむずかしそう」という方はYAコーナーをのぞいてみて下さい。YA世代が関心を持っているテーマの本を揃えてあり、小説や趣味の本、進路や学習に役立つ本や、マンガまでそろえています。中学生・高校生の方にはとても身近に感じられるコーナーです。



09:00
2024/03/20

セント・オブ・ウーマン 夢の香り

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資料コード:630337363
請求記号:D7BF/セ

 何度も繰り返し見たくなる映画は?と尋ねられて真っ先に挙げたくなるのがこの『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』(1992年の作品)。
 題名からはどんな映画かイメージできないかもしれないけれど、恋愛ものではなく、退役軍人と18歳の高校生との心の交流を描いた感動のヒューマンドラマ。

 アメリカの名門高校に通うチャーリー、学力は優秀だが家庭の事情で給費生。クリスマスにオレゴン州の両親の元へ戻るため、感謝祭の週末にアルバイトに応募した。そのアルバイトは家人が留守の間、盲目の元軍人の面倒を見るというもの。
 この元軍人のフランク、気難しく威圧的でおまけにとても口が悪い。とてもこんな人のそばにいられたものではないとチャーリーはこのバイトを断ろうとするが、盲目の人を一人で放っておくわけにはいかないと頼み込まれ、いやいやバイトを引き受ける。

 フランクはチャーリーにニューヨークへついていってほしいと頼む。目の見えない真っ暗闇の人生に疲れ果てていたフランクにはニューヨークで実行したいことがあった。

 一方チャーリーにもある悩みが。それは感謝祭の前夜、同級生たちが校長に仕掛けた悪だくみを目撃したことで、校長からある取引を迫られていたからだった。

 この二人が果たしてどのように信頼関係を結ぶのか、希望ある未来は見えてくるのか・・・

 この映画のみどころはなんといってもアル・パチーノ。人生に希望が見いだせない苦悩の表情と女性を前にしたときの柔らくチャーミングなほほ笑みのギャップ。レストランでタンゴを踊る場面、盲目の役どころなので、目の動きが止まったままなのに優雅なダンスで女性をリードする姿にウットリ。
そして最後の講堂での演説は、まさに声に出して読みたい英語。
“I have come to the crossroads in my days, and I have always known the right path, always, without exception, I knew. But I never took it, you know why? Because it's too damn hard. (中略)
Let him continue on his journey. You hold this boy's future in your hands, committee! It's a valuable future. Believe me! Don't destroy…protect it…embrace it. It's gonna make you proud someday…I promise. “

 『東大から刑務所へ』(堀江貴文・井川意高/著)(611974008)で、井川さんが「アル・パチーノが出ていた『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』という映画があるでしょ。私はあの映画が好きなのよ」と書いていらっしゃるのを見つけた。そのあとのくだりもあるので、ご興味のある方は是非こちらもどうぞ。
 
 さて、イタリアのバルニ社から、この映画のタイトルから名前をとった「セント・オブ・ウーマン」というバラが発表されていると知り育て始めている。赤紫色のフロリバンダ(中輪房咲で四季咲)で、モダンダマスクの香りがあるらしい。この春咲いてくれるといいな。



09:00
2024/03/20

数学者たちの黒板

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タイトル:『数学者たちの黒板
著:ジェシカ・ワイン
訳:徳田功
出版:草思社
資料コード:612366204
請求記号:410.4/ワ

『数学者たちの黒板』は、世にも珍しい「黒板の写真集」です。
写真家である著者が世界中の数学者109人を訪ねて撮影した板書の写真と、その黒板にまつわるエッセイが収録されています。

黒板に描かれているのはアルファベットと記号だらけの難解な数式や、まるで抽象画か子供の落書きのようにも見える不思議な図形たち。内容は教授が学生とのディスカッションのためにさっと書いたものから、一人の数学者が三十年以上取り組んでついに証明できた問題まで様々です。
添えられた解説によると、それらはどうやら理論数学や宇宙物理学、ビッグデータ解析などについて論じたものらしいのですが……残念ながら、まったく理解できません。しかしどの写真にも不思議な魅力があり、現代アートを鑑賞するように見飽きず眺めることができます。
もう一つ、個人的には黒板と一緒に映りこむ部屋の風景も見どころのひとつです。観葉植物や広々とした窓があるお洒落な研究所もあれば、書類の山と飲みかけのマグカップが並ぶ雑然とした教室もあり、謎に満ちた数学者たちの日常をちらりと垣間見ることができます。

「数学が生み出されるところなら、必ずどこかに黒板があるだろう」。
エッセイを寄稿した研究者の一人がこう語ったように、本書を読むと、デジタル化が進んだ現代にあっても多くの数学者にとって黒板がとても重要なツールであることが分かります。
黒板はゆっくり書くことで思考をまとめやすく、間違った箇所をすぐに修正できるという利点があります。また、視界に数式全体を収めることで直感的なインスピレーションを得たり、共同研究者たちと議論したりすることも可能です。こうした点が試行錯誤を必要とする数学的な思考にぴったりなのだといいます。もしかすると、この先何十年経っても、数学者たちは黒板を使って研究を続けているかもしれません。

ちなみに、黒板には欠かすことができないチョーク。この本によると世界中の数学者が口を揃えて日本製の「ハゴロモ・チョーク」を激推ししています。何でも書き味が抜群に良いのだとか……。その点では、日本の小中高生はフィールズ賞受賞者もうらやむ恵まれた環境で勉強していると言えそうです。

眺めて楽しい、読んで興味深い『数学者たちの黒板』。中央図書館に所蔵されていますので、ぜひお手に取ってご覧ください。


09:00
2024/02/20

実際の鳥、偶像と化した鳥、そして鳥の骨

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鳥類学。

個人的にはあまり馴染みのない単語に興味を抱いた理由は本の表紙でした。

逆説的にもあるいは挑戦的にも捉えられる書名も目を引きますが、中を開くと各章のタイトルや目次もさまざまなリスペクトに富んでいる構成でとても興味深く感じました。

 

鳥類学者という職業に携わる著者は「鳥」に関するさまざまな考察を行います。

それらは実在する鳥であったり、空想上の鳥であったり、時には鳥そのものであったりと多彩です。

 

鳥類学者である著者が小笠原諸島に降り立った事を皮切りに、多種多様な鳥の名前が飛び交います。
例えば、第1章では研究のため小笠原諸島を訪れた著者と共同研究者による鳥の観察から始まり本筋から逸れず適度に程よい各種のエピソードが語られています。

そして章が進むに連れて鳥類学者・動物学者・植物学者・地質学者等、各種のプロフェッショナルの方々が調査している状況が著者の視点から表現されていきます。

それらは決して堅苦しいものではなく軽妙な比喩表現によって親しみやすい雰囲気の文体に思われました。

 

また、調査先で発生したハプニングのことも書かれていて時にエッセイのように心に響きました。

 

鳥類学の研究を行うために訪れた先で調査地が消失することもあれば逆に新しい土地が生まれることもあり、自然を相手にすることはなかなか一筋縄ではいかないようです。

 

軽妙さのある筆致には人間味があり親しみやすさを感じました。

鳥類学者による調査報告や調査結果。

一見するとどことなく堅苦しい文面になりがちな印象ですが、ある意味でその印象を覆す一冊です。

 

書名:鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

著者:川上和人

出版社:新潮社

資料コード:611923125

請求記号:488/カ
09:00
2024/01/20

461個のおべんとう

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タイトル 『461個のおべんとう

出版社 ハピネット

資料コード 630329791

請求記号 D7AF/

 

子どもたちのお弁当を作り始めて4年めに突入しました。

とにかくお腹がすかないこと、彩りを考えたおかずをつめることを心がけているつもりです。

ところが、お弁当ぐらいは好きなおかずを、と思うと、全体的に茶色っぽくなってしまうのが悩みです。

 

そんな時に出会ったのがこの作品です。

『461個のおべんとう』は、ミュージシャンの「TOKYO No.1 SOUL SET」の渡辺俊美さんの実話を元に作られた作品です。

 

主人公は妻と離婚し、息子とふたり暮らし。

高校受験に失敗し、1年遅れで高校生となった息子の「お父さんのお弁当がいい」とのひと言から、主人公には「3年間、毎日お弁当をつくる」、息子には「3年間、休まず高校へ通う」という親子の約束が交わされます。

 

当たり前ですが、お弁当づくりは毎日のこと。

疲弊せずに可能な限りおいしいお弁当を作るために主人公は、

1)調理の時間は40分以内

2)1食にかける値段は300円以内

3)おかずは材料から作る

というルールを導入します。

 

とにかく主人公の作るお弁当がすごいのです。

息子のクラスメイトも毎日チェックするぐらいのクオリティ。

旬の食材や調味料だけでなく、料理道具やお弁当箱にもこだわり、ライブでへとへとな朝も二日酔いの朝もどんな朝もお弁当を作り続ける姿には頭がさがります。

そしてその父の頑張りに感謝し、きちんと言葉にして伝えている息子の姿もとても素敵です。

 

「おいしいものは毎日食べてもおいしい」、「おいしいお弁当を食べたらその時間だけでも幸せな気分」、「食べることは大事。きちんと食べればなんでもうまくいく」。

 

作中で心に響いた言葉です。

私の今後のお弁当作りの目標にしたいと思います。

 

小さな箱から生まれるコミュニケーション。お弁当の力ってすごいですね

 

こちらの作品は図書としても所蔵があります。

 

 

タイトル『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。

著者 渡辺 俊美 著

出版社 マガジンハウス

資料コード 211087820

請求記号 596.4/


09:00 | 映画・テレビ
2024/01/15

魔法のカクテル

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タイトル:『魔法のカクテル』 
著者:ミヒャエル・エンデ
出版社:岩波書店
資料コード:612113809 ほか
請求記号:児童943/エ

 私自身がミヒャエル・エンデの作品に初めてであったのは、中学1年の夏。
『はてしない物語』だったと思う。それこそはてしない大長編ファンタジーで、長編を読み慣れていなかった当初は目が回ったが、読み終わった後の余韻は忘れられないものとなった事を記憶している。
 その後、もう一つの名著、『モモ』にもすっかりはまり、エンデのファンタジーが大好きになった。

 今回、エンデの魅力を小学生の我が子に伝えようと、手に取ったのがこの本だった。
『はてしない物語』ほどはてしない長編ではなく、『モモ』を理解出来るほどにはまだ少し幼い精神年齢の我が子には、とっつきやすいのではないかと思った。

 お話の舞台は2つの代表作に比べるとシンプルで、主な登場人物も魔法使い2人と猫とカラスのみと、とてもコンパクトな気がする。また、時間軸もとても短い。大晦日の夕方5時から年が明けるまでの、たった7時間の中で展開される物語である。
悪い魔法使い達VS猫とカラス、どちらが勝つか?!大晦日の夕方から年が明けるまでの短期決戦がスタート!といった具合だ。
 もっとも、エンデの魔法で、知らず知らずのうちにどんどんストーリーに引き込まれてあっという間に読み進めてしまうのは間違いない。そして、これからの世界をつくっていく子ども達に向けて、エンデらしい形でしっかりとメッセージが込められているのも変わらない。

 もう一つ、実は本を開いてみるとわかるが、ちょっとした遊び心も見られる。
一つ一つの章はなく、かわりに時計の絵が描いてあるのだ。しかも、すこしずつ時刻が進んでいく。我が子はこの時計を目安に「昨日は確か何時何分まで読んだぞ。」と、毎日少しずつ読み進めて楽しんでいる様だ。

 この『魔法のカクテル』を入り口に、エンデの世界に入り込んでくれたら…という母の思惑は、果たして成功するだろうか。

参考:『はてしない物語』/資料コード:610443144 ほか
  :『モモ』/資料コード:610516090 ほか


09:00
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