監督:ナサニエル・カーン
請求記号:D7BK/ア
資料コード:630322772
「芸術の価値って、いったい誰が決めるんだろう?」
そんな問いを投げかけるようなドキュメンタリー映画が、「アートのお値段(The Price of Everything)」です。(2018年製作なので、コロナ前のお話です。)
言わずと知れた、ニューヨークにあるサザビーズでアート作品のオークションが迫る中、6週間にわたって美術界の有力者たちにカメラを向け、現代アート市場の華やかさと、その裏にあるお金の動き、思惑や本音をリアルに映し出した、アートとお金の関係を探ったドキュメンタリーです。
「いつからアートが商品になったのか?誰が何のために買っているのか?そもそも、アートの値段・価値って何だろう?」
映画の中では、オークショニア、ギャラリスト、評論家、コレクター、そしてジェフ・クーンズ、ゲルハルト・リヒター、ラリー・プーンズといった一流のアーティストたちが(名前はピンとこないけれど、作品は見たことがある!かも?レベルのずぶの素人の私。。。)、それぞれの立場で「アートの価値」について語ります。アートが「投資対象」として扱われる現実や、バブル化していく市場の熱狂とその裏側が映し出されていきます。
さらに、オークション当日の様子を通して、作品に付けられた「値段」が本当の意味でのアートの価値を決定づけるのか、という問いが投げかけられていきます。彼らの言葉からは、「芸術とは何か」「価値とはどこから生まれるのか」という答えのない答えに対して、皮肉や辛辣さを込めながらも、みな冷静に、真摯に、愛を持ってアートに向き合っていることが伝わってきます。
この作品を観ていて強く感じたのは、アートの世界は本当に水ものだということです。ある作品が誰かに高く評価されることで、突然その「価値」が跳ね上がる。けれど、意図してか意図せざるかにかかわらず、その評価が変われば、世の中の興味関心から一瞬にして消え去っていくのです。アーティストたちも、それを嫌というほど知っていて、その中で自分の本当に大事にしたいものは守りながら、日々創作活動を行っているのです。
また、アーティストだけでは完結しない芸術の中で、作品を生み出す人、買う人、見せる人、語る人、見る人、そのすべてが関わり合って初めて「アート」というものが成り立ち「価値」が生まれる。そう思うと、微々たるものですが自分もそこにかかわっているんだという思いと、ほんの少しですが、芸術やアートに対して背筋を正す気持ちにもなりました。
現代アートに詳しくなくても、アートという言葉の奥にある「人の価値観」や「お金との付き合い方」に気づかされる、そんな作品です。芸術が好きな人も、そうでない人も、「価値ってなんだろう?」と一度立ち止まって考えてみたくなる、そんなきっかけをくれる映画です。
そして何より、この映画を通して、画面越しにさまざまなアート作品を鑑賞することができます。
今はまだ、ぎりぎり秋!!芸術の秋ということで、美術館に足を運んで本物のアートにも触れてみたくなりました。