請求記号:D7AJ/ホ
資料コード:630006100
監督:高畑 勲
原作:野坂 昭如
本当はこの映画あまりに悲しすぎて、嫌いです。
最初に見たときは、涙が止まらず、ティッシュが山を築いていたほどでした。
もう紹介するまでもない有名な映画ですが、「昭和20年9月21日 ぼくは死んだ」という不思議な場面からスタートします。戦争末期の神戸三宮辺りが舞台です。
「海軍さん」と呼ばれた軍艦乗りの父親を戦争でとられ、心臓の持病を抱える母親と少年と幼い妹の三人が暮らしている町が空襲にあい、母親を亡くし自宅も焼き出されてしまいます。その後頼った親戚には辛く当たられ、それならばと二人だけで生きることを選択します。
二親そろっていても生きづらい戦中戦後の世の中、まだ幼い二人ではなんともすべなく、食べるものもなく栄養失調でやせ細り、ついには力尽き相次いで亡くなってしまうというものです。
幼い妹が大事に大事になめていたドロップのあき缶に、少年が自分で火葬した妹の骨を納め、少年が力つきるまで持っていたことと、駅員さんが投げ捨てた缶の中から妹の白い小さな骨のかけらがこぼれ落ちるさまは胸がつまる思いです。
タイトルの「ほたる」とは、映画でも沢山舞っている、はかない命の光をともす昆虫の蛍だとずっと思い込んでいましたが、空襲の時の焼夷弾が降り注ぐ状況で、火の粉の「火垂る」でもあるとその後知りました。
唐突ですが、花火大会のニュースで、打ち上げ花火を真下から捉えた映像を見た時がありますがまさに火垂る状態で、戦争では殺傷能力があるこんな物が降り注いでくるかと思うと恐ろしいかぎりです。
戦争を経験された方が、花火大会はあの音と光が空襲当時を思い出させるので、嫌いだと話されていたことがありました。
今回久しぶりに映画を見返してみると、涙にくれるより、あの兄妹がどうにか戦後を生き延びるすべはなかったか強い憤りを感じました。
高畑監督はこの作品は反戦映画ではないと述べておられたようですが、戦禍が弱い者に及ぼす惨劇を淡々と見せることは、とても大きな意味があると思います。
まだ地球上で戦火がたえない国や地域では、この映画の兄妹のような子どもたちがいて、今も増え続けていると思うと胸がしめつけられます。
日本では戦後80年となりましたが、決して忘れてはならない映画です。