知人宅の雛人形を眺めながら、
我が家の冷蔵庫に甘酒の残りが冷凍したままであることを思い出した。
冬の最中、冷えきった身体で飲む甘酒は格別。
そんな状況になったときに飲もうと半ば楽しみにとっておいたものだが、
そのまま忘れていた。
振り返ればこの冬、身体が冷えきるという状態になったことがなかった。
少し寒いかなと感じると、すぐさまミニカイロをぺたぺたと服に貼り防寒対策。
庭の草むしり、植木の枝切り、庭仕事はほとんどサボってしまった。
おかげでこの冬は風邪もまったく引かずに済んだが、
少々身体を甘やかし過ぎたと反省している。
「次の冬まで、さらば甘酒!」と思っていたところ、
甘酒の季語はなんと夏であることを知った。
発酵博士・小泉武夫著『くさいはうまい』(文藝春秋)によると
江戸時代「甘酒は夏バテに効く」と夏に頻繁に飲まれるようになり、
甘酒売りが夏の風物詩となって、季語も夏になったらしいとあった。
甘酒の成分を分析すると、ブドウ糖・必須アミノ酸類・ビタミン類が豊富に含まれていて
病院で受ける点滴と同じ成分だそうだ。
甘酒の偉大さと江戸の知恵に感心する。
このことを山梨県山奥在住の60代の知人に話したところ
「そういえば子どもの頃、ウチのばあさんが夏に甘酒を飲んでいた」との目撃証言を得た。
この江戸の知恵、局地的に昭和の中頃まで伝わっていたようだ。
今年の夏は江戸時代の総合活力ドリンク剤、甘酒を飲んで平成の猛暑を乗り切りたいものだ。