私の郷里はかつて銅の産出で大変栄えた町でしたが、
もはや日本国内に鉱山というものがひとつも残っていない現在、
最盛期に3万人と言われた人口はわずか6500人になってしまいました。
地元に残っている友人がブログを開設して、日々のトピックや昔のことを記事にしてくれています。
ゆかりのある何人かが「あんなことがあったね♪」「こうだったね♪」と
昔の記憶を確認しあうようなささやかなブログなのですが、
少し閲覧の間があいたある日、コメント仲間の方から「あなたにお尋ねがきてますよ」と
指摘がありました。まったく見ず知らずの方でした。
実は昨年の4月頃だったか、小学校で習った歌の話題になったとき、
「習った歌なら全部覚えてるぞ!ついでにお遊戯会の出し物も劇もみんな覚えてるぞ!」と
他愛ない自慢をしてしまったのですが・・・
その方は、私が「小3の学芸会でこんな歌でこんなお遊戯を踊った♪」と、
ほんの1行載せた歌の歌詞を発見して、
「昔母が歌ってくれた歌です。これまで、どこを探しても見つからなかったのです。
題名と歌詞を教えてください!」と。
なんでも、こども会のバス旅行の際、他のみんなが歌謡曲を歌うなかで
お母さまだけがその童謡を歌ったのが、ずっと想い出に残っていらっしゃったのだとか。
すぐに憶えている限りのことをお伝えしました。楽譜を載せられなかったので、
「お手元にキーボードがあれば、この音で弾いてみてください」と歌詞に音符も添えました。
その歌は一般的な童謡ではなく、お遊戯用に作られた歌だったので、
これまで「童謡集」でもインターネットでも探しようがなかったようでした。
「母は保育園に勤めていました。納得です。これで胸のつかえが取れました」と、
すかさずお礼のコメントが届きました。
きっと探し続けていた空白のピースをはめられた思いだったのでしょう。
その方にとって、その名前も知らない歌は、
お母さまとの想い出を繋ぐ宝物だったのかもしれません。
何十年も忘れずにいて、そして何の縁もゆかりもない小さな(友だちごめんなさい!)ブログの
1年半も前の、それも記事本文でなくコメントの中から、
たった1行の歌詞を探し当てたのです。どれだけお母さまを愛していて、
たった一度聴いた歌を何十年間も忘れずにいたのだろうと、感慨深いものがありました。
と同時に、10年前ならこのような手段で探し物にたどりつくことなど
考えられなかっただろうとも思いました。
ちなみに、その「はめ込まれたピース」は
「かぐや姫」(加藤省吾作詞、海沼実作曲)というお遊戯の歌で、
昭和20~30年代に学芸会でよく使われたようです。私はその他大勢の踊り子役でした。