父は87歳になりました。
覚悟はしていましたが、老いて弱った姿を見ると
何とも言えない気持ちになります。
海軍士官だった父の日常生活は、筋金入りの折り目正さで、
TVを見ながら寝そべったりすることはありませんし、
家の中を歩くときや扉の開閉に殆ど音を立てません。
私の娘たちは密かに「ラストサムライ」と呼んでいます。
昨年になって初めて知ったのですが、
父は震洋特攻隊として出撃直前に、上海で終戦を迎えたそうです。
家族全員が即座に納得しました。
そうかといって父は決して堅苦しい人ではなく、
洒脱なユーモア精神の持ち主で、家族を笑わせるのが得意なのです。
その精神は足が利かず、目が不自由となった今でも殆ど変わることがなく、
何かと厳しい介護の日常を癒してくれています。
自分がいかに父を愛し尊敬しているかを、介護をするようになって
今更ながらに実感し、そのことに少し驚いています。
無欲で誇り高く生き抜いてきた父の人生が、
最後まで尊厳を失うことなく全う出来るよう、娘として心から願ってやみません。