みなさんはお盆をどのように過ごしていらっしゃいますか。
私の娘時代は祖父母宅に帰省し、みんなでお墓参りをして食事をするぐらいで、
あとは蝉を捕まえたりプールで泳いだりと、真っ黒になって遊んでいました。
あまりご先祖様を意識していなかったように、記憶しています。
しかし結婚以来、8月のお盆は夫の実家に帰省し、
その土地の風習に従ってお盆を迎えるようになりました。
私の人生で、お盆は大切な行事の一つになりました。
お盆の前夜、赤飯の下ごしらえからお盆の準備は始まります。
赤飯やご馳走を作り、お墓や仏壇に供えるのです。
2つのお寺に、ご先祖や親戚、知り合いのお墓があるので、何カ所かお参りします。
小さめのトレイを9つほど用意し、赤飯や煮しめ、天ぷらやお菓子などご馳走を盛り、
それぞれのお墓に、花束と共にお供えします。
仏壇にはお膳を2膳、器にご馳走を盛りつけ供えます
お盆当日は、赤飯をササゲ(豆)と共に時間をかけて蒸し器で蒸し上げていきます。
精進料理ですので、根野菜や海草、大豆食品を使った煮しめ、天ぷら、酢の物など
お供え用と人間様用とで、合計18人分の料理を作ります。
まるで旅館の女将?否!しがない料理人か、と毎年台所で問い続けます。
あちこちの鍋から湯気がぼうぼうと出るので、東北の地ですがかなり暑く、
汗だくになりながらのご馳走作りです。
子供達やじいちゃんは、お墓の掃除と灯籠作りです。
手作りの灯籠の土台が何組かあり、それに習字の半紙を貼り付け、
中のろうそくに火を灯すときれいに半紙が浮かび上がります。
その半紙に、絵の具でそれぞれ好きな絵を描いて灯籠に貼り付け、ご先祖様を迎えます。
父ちゃんとおじちゃんは、仏壇の掃除と飾り付けです。
仏壇の上部に昆布を吊り下げ、そこに色つき素麺、姫リンゴ、ハマナスの実など
ほかの飾り物と一緒に飾り付けていきます。
仏壇がきれいになったら、果物やお菓子、花、お膳のご馳走をお供えします。
花束も用意し、準備が整ったら家族みんなでお墓参りに出かけます。
大体いつも出かけるのが夕方になってしまうのですが、
灯籠に火を灯すと、辺りが暗い方がきれいに見えるので、
ご先祖様にも、おまえたちはここか?とよく分かるのではないかと、
毎回同じ話しを ばぁちゃんとしています。
夕方にもかかわらず、あちこちから家族がお参りに来ていて、
お孫さんらしき甲高い声も聞こえ、にぎやかです。
行き交う人はみな、「おばんですぅ。」と挨拶を交わします。
「こんばんは。」の意味ですが、「おばんですぅ。」の方が、なにやら暖かい気持ちになります。
「今年もお盆を無事に迎えられましたね」といった感じがして、
謙虚になり、感謝の気持ちにもなります。
ご先祖様がいなければ、私たちはここにいない。
日々忘れていますが、大切なことを思い出させてくれる日だと改めて思います。
お参りをしていくうちに日も暮れ、灯籠の火が半紙に描いた絵をさらにきれいに映し出し、
うちの者はここだよと、夜空に知らせているようです。
お墓参りから帰ると、今度は人間様のご馳走の支度が待っています。
仏壇に明かりを灯して手を合わせ、人間様のお腹にも明かりを灯すべく、
旅館の料理人は、まだまだ奮闘中です。