例年にない猛暑のなか、東北地方は夏祭りの真っ最中です。
青森県地方のねぷた、ねぶたに始まって、秋田の竿灯、山形花笠、仙台七夕・・・
北の夏は短いので、祭りを追っているうちに、あっという間に秋風が吹き始めます。
私の郷里は秋田の北の端の鉱山町でした。
最盛期には2万人近くの鉱山労働者とその家族が暮らしており、
8月にはそれなりに華やかな七夕祭りがおこなわれました。
それは青森のねぶたのミニチュア版と言いましょうか。
各地区(鉱山の社宅)ごとにそれぞれ趣向をこらした山車
―武者絵であったり、花電車であったり、
その年にヒットしたテレビ番組のヒーローであったりしましたが―
を馬車の荷台に載せ、おもに子どもたちが引っぱって町々を練り歩くのです。
おそらくは、郷里を離れて山のなかの辺鄙な鉱山に流れ着いた労働者が、
ふるさとの祭りを偲んで、わが子に伝えようと始めたのでしょう。
私がこどもの頃は、遠くから「ヤレヤレヤ~♪」という独特の囃し声が聞こえると、
無性にわくわくし、と同時に、それは鉱山の人たちの祭りで、
村の子の私は参加できないものだったので、羨ましくもあり寂しくもあったのでした。
その祭りも、鉱山がなくなってから随分規模の小さいものになってしまったと聞きました。
私の郷里だけでなく、日本全国の町や村には、それぞれの歴史のなかで育んできた
独自の祭りがあったことでしょう。
東北三大祭りもそれはそれで素晴らしい文化ではありますが、
限界集落と言われる高齢者だけが暮らす地域が増えていくなかで、
ささやかではあってもゆたかな想い出や伝統を作ってきた祭りが、
ちいさな泡のように消えていっているのかもしれないと、寂しい気持ちになったのでした。