別に意識して選んでいるわけではないのですが、最近方言が元気な本によく出会います。
まずは『いとみち』(越谷オサム著 新潮社 2011.8)の津軽弁。
津軽弁が登場する最近の小説には
『津軽百年食堂』(森沢明夫著 小学館 2009.3)
もありますが、この『いとみち』の津軽弁には恐れ入りました。
主人公が特訓する「おがえりなせいまし、ごスずん様(お帰りなさいませ、ご主人様)」などなど、
交わされる津軽弁のなんと濃いこと!
小説に登場するおばあちゃんが話す言葉となると、「“%Ψ@○#$<!」と意味不明に表記され
ています。確かに、津軽出身の連れ合いの故郷では話す言葉は濁点だらけ。主人公のおばあ
ちゃんと同じ板柳に住む大叔母の話す津軽弁となると、私にも記号に聞こえます。
そんな津軽弁が、舞台となるメイド喫茶と絶妙にマッチするのが楽しい1冊でした。
『でーれーガールズ』(原田マハ著 祥伝社 2011.9)の岡山弁も味があります。
「でーれー」とは「ものすごい」という意味だそうですが、岡山出身のスタッフによると、「でーれー」
は女性ではあまり使わない、女性だったら「ぼっけえ」を使う、とのこと。
そういえば、岡山出身の作家による『ぼっけえ、きょうてえ』(岩井志麻子著 角川書店 1999.10)
という作品が過去に話題になりました。
「ものすごく、怖い」というタイトルよりも「ぼっけえ、きょうてえ」の方が遥かに恐怖感を漂わせますし、岡山弁が巧みに使われた物語は、実際とても怖かったことを思い出します。
方言の代表格といえば、ほとんどの作品の舞台が沖縄、登場人物が語る言葉は沖縄方言(とい
うよりも沖縄語)の作家池上永一の作品でしょう。特に『テンペスト』(2008.8)から始まり、その続編
ともいえる『トロイメライ』(2010.8)、『唄う都は雨のち晴れ』(2011.5 すべて角川書店)では、琉球の
時代に暮らす人々の姿が沖縄語によって、より生き生きと感じられます。
その他にも三重の山間を舞台にした『神去なあなあ日常』(三浦しをん著 徳間書店 2009.5) や、
高知の町おこしに挑む『県庁おもてなし課』(有川浩著 角川書店 2011.3)など、方言が使われることでその土地のイメージが広がると同時に、そこに暮らす人々を優しく包み込む小説も話題になりました。
日本には全国各地、それぞれに育まれた文化があり、美しい言葉があります。
それを小説の中で体感できるのは実に楽しいことだと深く感じています。
今年の目標は方言満載の小説読破による全国制覇!
他にもこんな小説があるといった情報をご存知の皆さん、ぜひ教えてください!!