| 2011/10/27 | スタッフのおすすめ本!(11月) | | by 図書館スタッフ |
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書名:風が強く吹いている
著者:三浦しをん
請求記号:913.6/ミ
(単行本で6冊・文庫本で2冊あります)
突然ですが、いつもお正月はどう過ごされていますか?
「もちろん寝正月だよ。仕事の疲れを寝だめしてとる!」という強い意志の人。
また「のんびりゆっくりお笑いテレビをボーッと見て、お屠蘇を飲んで御節を食べて
ほろ酔い加減でいつの間にか過ぎてしまう」という人は、また今度お会いしましょう。
「いいや、元旦にきっちりお参りを済ませ、二日の朝は早くから起きだし、
昼もとっくに過ぎて2時ごろまで、4チャンネルに合わせてテレビを見続け、翌3日の朝も懲りずに
同じことを繰り返す」という人にこの本をお薦めします。
ましてや、沿線で大学や新聞社で配られる小旗を打ち振り、必死の形相の若者に
「ガンバレー!」の声をかけるため応援に駆けつけるような人には、特にお薦めします。
そうです!
「十人の力を合わせてスポーツで頂点を取る」大学駅伝の関東チャンピオンを決める地方大会、
輝かしい「東京箱根間往復大学駅伝競走」、つまり箱根駅伝にまつわる物語です。
物語の主人公は蔵原走。走と書いて「カケル」と読ませます。
走ることを祝福され、運命づけられたような名前の持ち主です。天才の常(?)として、
生きることに不器用な走は、春のある日パンを万引きして、自転車で追いかけてきた
清瀬灰二(ハイジ)と出会い、彼の勧めで竹青荘(実はここは大学の陸上競技部練成所)に
住み着くことになります。
そこにはすでに、ハイジの深謀遠慮によって集められていた8人の個性的な面々がおり、
駅伝10区間を走るのに必要な10人の頭数が揃ったことになります。
ハイジの箱根駅伝出場の野望を聞き、一同唖然としますが、
今までハイジが自分たちにしてくれた恩義を強制的に感じさせられ、
参加に同意するしかありませんでした。
参加を決めた面々に立ちはだかるのは
①5000mを17分(現在では16分30秒)以内で走る公認記録が必要
②立川の自衛隊駐屯地や昭和記念公園・市街地を回る20kmを走る予選会で、
1チーム10人の合計タイムが上位9校に入るという難題です。
何とかぎりぎりのところで難題をクリアし、彼らは箱根駅伝出場権を獲得します。
そして物語はついに箱根駅伝本番へ突入します。ここから10区間十人十色のドラマが始まり、
それぞれが苦悩を抱え、箱根路を駆け抜け大手町のゴールをめざします。
はたして彼らは「風が強く吹いている」のを感じることができるのでしょうか。
著者の三浦しをん氏は、奥深い分野に係わる人々の日常を軽妙に描いているものが他にも何冊かあります。近著では、国語辞典編纂を、言葉という大海に乗り出す舟にたとえた「舟を編む」。
日本の古典芸能である文楽に係わる人々を描いた「仏果を得ず」もあります。
普段接することがないその業界を見たようでウンチクもゲット。
こちらも是非どうぞ。
書名:日本の素朴絵
著者:矢島 新
出版社:ピエ・ブックス
請求記号:721.0/ヤ
素朴絵とは聞きなれない言葉だと思いますが、
著者は『広辞苑』の「素朴」という言葉の定義「人為なく、自然のままであること」を踏まえ、
「リアリズムのみを目標としないおおらかな具象画」と定義しています。
素朴と対比されているのが人為で、絵画における人為の極みとしてのリアリズム絵画が
「本物そっくり」を目標としているのに対し、「本物そっくり」がうまいという基準を超越した
「ゆるくとぼけた味わい」が素朴絵の特徴です。
定義を説明されてもピンとこないかもしれませんが、表紙に掲げられた「築島物語絵巻」を見れば
「ゆるくとぼけた味わい」がたちまち直観されることでしょう。
「築島物語絵巻」は室町時代の絵画ですが、そこに描かれる人物や建物の適度なシンプルさ加減や、遠近感のない画面のフラットさ加減は、現代の視点から見ても違和感のない、むしろ馴染みのある味わいを感じさせます。
本書にはそのような味わいに満ちた、古代から近世にかけての素朴絵と工芸品が
72点紹介されています。
個人的には、近世の禅画の素朴さにとても魅かれました。
白隠の「蘭蟷螂」や、仙厓の「花見」・「犬」には、かわいいという言葉を禁じえませんでした。
ぜひ本書を手に取ってご覧ください。
また、『芸術新潮』2011年9月号では、
著者の矢島新さんが「女子大生と選ぶ かわいい?日本美術30選」という企画で、
日本美術における「かわいい」とは何かを考察しています。
こちらで紹介されているのは素朴絵だけではありませんが、本書とあわせて読むことで、
日本美術の新たな楽しみ方を知ることができると思います。