「松本隆作詞活動四十五周年トリビュート 風街であひませう」
請求記号:中置/C7CA/カ/359
資料コード:630212995
発売元:JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント
娯楽といえばテレビを観ることぐらいだった小学生の頃、毎週月曜日と木曜日のゴールデンタイムに放送される某二大歌番組は、当時ご多分に漏れず熱中していた番組だった。
私が夢中になっていた頃は、80年代アイドル黄金期の時代であり、毎週のように、(中森)明菜ちゃんやシブがき隊、マッチ(近藤真彦)、としちゃん(田原俊彦)等が画面を華やかに彩って歌っていた。中でも、明菜ちゃんと人気を二分していたのが(松田)聖子ちゃんだった。
聖子ちゃんの曲が大好きだった私は、必死に歌詞を覚え、画面の中で歌っている彼女に合せていつも一緒に歌っていたのだが、たいていの曲が、一桁そこらの人生経験しか積んでいない当時の私にとっては、一体人生を何周したら解るようになるのか?というくらい、難解な歌詞がよく出てきた。
「瞳はダイヤモンド」
・・・映画色の街 美しい日々が 切れ切れに映る いつ過去形に変わったの?
泣かないでMemories 幾千粒の雨の矢たち 見上げながらうるんだ 瞳はダイヤモンド・・・
「白いパラソル」
・・・渚に白いパラソル 心は砂時計よ あなたを知りたい 愛の予感
風を切るディンギーで さらってもいいのよ・・・
映画色って何色?心は砂時計とは?ディンギーって一体何じゃ!?
当時はインターネットで調べるといった術もなく、歌詞の意味もよく分からないまま。でもなんだか都会っぽくて素敵、、、。ミーハーな私は、あーでもないこーでもないと、意味を色々と想像しながら、歌を楽しんでいたように思う。
大人になって人生経験も当時よりは積んだ頃、初めて作詞家の松本隆の名前を知り、多くの聖子ちゃんの歌の作詞を担当していたことを知った。さらに、当時流行っていた他の歌手の曲の歌詞も手掛けていることもわかった。寺尾聡の「ルビーの指環」や斉藤由貴の「卒業」、森進一の「冬のリヴィエラ」等、あの人もこの人も、あの歌もこの歌も、といった具合である。
松本隆の作った歌詞を改めて読んでみて、心情を丁寧に表現しているものの、直接的ではない独特な言い回しが、受け手側の各々の経験や感性に委ねられているように感じた。だからか、余計にその詞の世界観にぐっと引き込まれる感覚があるのかもしれない。また、メロディがなくとも、彼の歌詞だけでも十分成立するのではと思うほど、ことばに力があり、詩以上に詩的だなあと思う。
今ではディンギーの意味もわかるし、なんとなーく、ではあるが、自分なりの解釈で歌詞を読むこともできるようなった。きっとこれからも、彼の曲を聴く度に、その時々の自分の経験値で感じ方も変わるのかもしれないし、今まで見えなかったものが見えてくるのかもしれない。