子どもの頃から、なぜか相反するものを兼ね備えている人によく憧れていた。
小学生の頃、おませでクールなべっぴんの優等生がいた。そんな外見に反し、クラスの男子としょっちゅうふざけたことをやったり言ったりして遊んでいた。クラスの他の女子たちがどう思っていたかは知らないが、私にはそんな彼女がとてもかっこよく見えていた。小学生の頃は、男子に近づく女子は、ぶりっ子だと断罪され、女子達から妬みの対象になっていたが、その子は他の女子と違い、媚びる感じもなく自然と男子と戯れていた。それも、さりげなく。
彼女は結局中学受験をし、私とは別の道を進んだが、しばらくたって地元で偶然会った時も、たいそうべっぴんさんであったが、相変わらずふざけていた。女子校に進学した彼女の三枚目さは、さらに磨きがかかっているようにみえた。そして話に聞けば、男子校の友達とつるんでいるらしかった。曰く、男子の方が馬が合うらしい。きっと彼女のことだから、さらりと、さりげなく、なのだろう。
また高校生の頃には、私とは別の学校ではあったが、部活動を通じて知り合いになった女子がいた。1年間の語学留学経験があり、アメリカで生活していた為か、どこをどう見ても私たちとは違うオーラを纏っていた。高校生でファッションに目覚めはじめた時期と相まって、アメリカ帰りの彼女は、すこぶるおしゃれに見えたし、実際おしゃれだった。地方の高校生の私には、当時読み漁っていたティーン誌に載っている東京の高校生と彼女が重なって見えていた。
彼女と話していると、ごくまれにであるが、彼女の口から英語が出てくることがあった。さながら、ルー大柴である。そんなこと、万が一にも他の女子がしようものなら、早速ウザいと断罪され、女子達から総スカンの対象になるが、彼女は違った。非の打ち所がないほどに、ナチュラルにルー大柴をやってのけるのだ。欧米か!、と突っ込みを入れたくなる、そんな彼女だったが、意外にも、いつも必ずアイロンのかかったハンカチとポケットティッシュ(さらにはソーイングセットまで!)を持ち歩いていた。彼女は、私達の誰よりもやまとなでしこであった。平気で制服で手を拭く女子がざらにいた中、そっと自分のハンカチを貸してくれることもあった。もちろん、さりげなく。
他にも、学生時代から今に至るまで、私の心に強烈な印象を残していった人たちがいる。彼ら彼女らの、ギンギラギンにさりげない様は、人と違うことはしない、はみ出さない、みんなとおんなじ、が安心だった時代に、だからこそ、キラキラと輝いて見えていた。そこにはたしかに「個性」が存在していたのだ。ありがたいことに、そんな人たちと身近に接し、時に吸収しながらここまで生きてきた。そうして何十年と歳を重ねてきた今、自分が目指す姿がある。それは...
ちょっと変で素敵なおばさん、である。幸か不幸か、ギンギラギン(ちょっと変)はもうすでに備わっているので...汗、相当時間はかかるが、さりげなく(素敵)磨きに邁進する日々である。
参考資料
タイトル:おなじところちがうところ
請求記号:E/ア
資料コード:612432963
タイトル:マッチ★ベスト
請求記号:C7CA/コ
資料コード:630113638