長い間、不規則な生活を送ってきた。
朝は必要があるとき以外は決して早起きをすることはなく、
夜は静かな時間を好きなだけ使ってきた。
そんな夜型生活を、節電目的に朝型に変えることにした。
毎朝きちんと起きるには、起きたい時間に合わせて寝るのではなく、
毎朝同じ時刻に起きることから始めるのが大切だという。
眠りにつける時刻はその日に目覚めていた時間や疲労度などで決まり、
意志でコントロールできない。
寝不足を考えて早く寝ようとしてもすぐに寝つけないのが普通で、夜は眠くなるまで
布団に入らず起きていて、朝は眠くても起きることから始めなければならないのだ。
そして、とにかく朝起きたら光を浴びる。
これによって、体内時計のリズムがリセットされ、そこから15~16時間後に眠気が起こる。
その眠気を利用すれば、夜も早く眠れるようになるというわけだ。
早速、その体内リズムを利用して早寝早起きを目指すことにした。
最初の頃は早起きへの気合があるせいか、毎日苦もなく起きることができ、
しばらくすると目覚まし時計よりも早く目覚めるようになった。
そうなると、朝型人間へと生まれ変わったようで何となく気分がいい。
ところが、早起きに慣れてくると今度は夜の時間が恋しくなるもので、
少しずつ夜更かしグセが舞い戻ってきた。
当然、寝不足になる。だが、それ以上の睡眠を求めたくはない。
というのも最近の研究では、寝過ぎる方が健康に悪いことがわかっているからだ。
寝不足になると、不足した量に応じて睡眠が質的・量的に変化する。
起きている時間が長いほど、深い眠りが多量にまとめて出現し、
不足分を補ってくれるメカニズムが人間には備わっている。
特に寝入りばなの3時間は優先的に深い眠りが現れ、その後は浅い眠りが主体になるので、
寝過ぎるとかえって睡眠の質が悪くなるのだ。
ならば、寝不足の方が密度の濃い効率が良い眠りをとれるはず、と思ったものの、
日中の強い眠気にだんだん抗えがたくなってきた。
そして、30分だけと思って昼寝をしたら、起きたときに3時間経過!
これは絶対にまずい。完全な寝不足と認めざるを得ない。
とはいえ、夜更かしに慣れると夜半にならないと眠れず、寝不足を解消するには
朝起きる時間を遅くするしかない。
そうして、いつの間にか以前の睡眠スタイルに…。
人間には “朝型”と“夜型”がいることがわかっていて、現在その体内リズムに関わる
20種類ほどの時計遺伝子も見つかっている。
高齢になると早起きになると思われがちだが、若い頃から夜型の人は
年をとっても夜型のままのことが多い。
自分の母も80歳を過ぎても一向に早起きにはならず、
いつもメールを送ってくるのは夜中の1時や2時だ。
自分にもそのDNAがしっかり受け継がれていることを認めつつ、夏まで
もうしばらくの間だけ、この夜中の親子メールのやりとりを楽しませてもらうことにした。
参考文献
「快適睡眠のすすめ」堀忠雄著 岩波書店 中央所蔵:M496.6/ホ
「睡眠の科学」櫻井武著 講談社 中央所蔵:M496.6/サ
「睡眠障害の対応と治療のガイドライン」睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会編集 じほう
「睡眠学」日本睡眠学会編集 朝倉書店
「睡眠リズムと体内時計のはなし」山本大輔著 日刊工業新聞社