| 2011/03/04 | スタッフのおすすめ本!(3月) | | by 図書館スタッフ |
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タイトル:『きつねの窓』
請求記号:E/ア 913/ア
著者:安房直子
その昔、「世界名作子ども文庫(?)」というテレビのアニメーション番組があり、
好きで毎週見ていました。
今は亡き岸田今日子さんがおひとりで朗読や語りを担当していました。
内容は外国の民話や日本の創作童話などが主だったと思うのですが、あまりに昔のことなので
番組のタイトルさえうろ覚えで、おおかたは忘れてしまっています。
それでもこの番組で出会って大好きになったお話もいくつかあり、中で最も強い印象を受けたのが
この『きつねの窓』でした。
‥と言うわりには、実はすっかり忘れていて、
何年も経ってから偶然に今度は本の形で再会した時には、
岸田今日子さんのあの独特の声や語りくちがよみがえってきて、思わず涙しました。
そうだ、私はこの物語が大好きだったんだっけ‥!
読み進んでいくと、不思議なことに舞台となっている桔梗が咲き乱れる花畑や、
そこをさっと走り抜けていく白いきつねの姿などが目の前にふわっと浮かんできます。
私の場合は最初の出会いが映像だったから、というせいもあるのかもしれませんが、
それだけではなく、ひとつひとつの文章や描写のなせるわざだと思うのです。
何度読み返してもそのたびに、登場人物(?)である子ぎつねの悲しさ・いじらしさ、
語り手の「ぼく」が迎える結末のせつなさに、鼻の奥がつんとなります。
おとなの方には、気持ちを少しばかり洗い流してきれいにしたい時などにおすすめです。
もちろんお子さんにも断然おすすめ。
図書館には絵本と児童文庫の本の両方があります。
美しい挿絵とともに楽しむのも良し、
文字を目で追って自分なりのイメージを作りあげるのも良しです。
タイトル:「ルリユールおじさん」
請求記号:E/イ
著者:いせひでこ
今年は「電子書籍元年」と言われ話題になっていますが、
そんな今だからこんな本を読んでみてはいかがでしょうか。
2006年に発売されたいせひでこさん作「ルリユールおじさん」です。
2007年度“「この絵本が好き!」国内絵本”第1位になりました。
いせひでこさんはとてもすてきな絵を描かれる作家ですが、この本は偶然パリで見た
ある窓に惹きつけられたのがきっかけでできた絵本とのこと。
パリにアパートを借りて、何度も路地裏の工房に通い、描かれたそうです。
ルリユールとは製本の職人さんのこと。
大切な植物図鑑がばらばらに壊れてしまった少女ソフィーは、
本を修理してもらうために街中歩きまわりながら「ルリユール」を探します。
ある街角でようやく出会う二人。
かみあわないちぐはぐな会話、
ルリユールの仕事場がめずらしくて一つ一つの工程に興味津々なソフィー。
だんだんソフィーの図鑑にかける思いが通じ、
邪魔そうにしながらもルリユールおじさんは植物図鑑を一つ一つの丁寧な手作業で蘇らせます。
そしてソフィーはその植物図鑑を大人になるまで大切にして、
植物学の研究者になったというお話です。
ルリユールは、ヨーロッパで印刷技術が発明され、
本の出版が容易になってから発展した職業ですが、
IT化、機械化の時代となり、60もの工程のすべてを手仕事でできるルリユールおじさんのような
製本職人はひとけたになったそうです。
「本には大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱいつまっている。
それらをわすれないように、未来にむかって伝えていくのがルリユールの仕事なんだ」
「修復され、じょうぶに装丁されるたびに、本は、またあたらしいいのちを生きる」
改めて、本を大切にしたいと思う気持ちが心の底から湧いてきます。
いせひでこさんの柔らかく美しい水彩画で描かれたパリの街並みもすてきなおしゃれな絵本です。
この絵本の出来た経緯を綴ったエッセイ「旅する絵描き パリからの手紙 914.6/イ」
(伊勢英子著 平凡社)、同じパリの街で描いた絵本「大きな木のようなひと」
(いせひでこ/作 講談社 E/イ)もおすすめです。