| 2009/03/27 | スタッフのおすすめ本!(3月) | | by 図書館スタッフ |
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書名:天使の歩廊 ある建築家をめぐる物語
著者:中村 弦
請求記号:913.6/ナ
デビュー作にして“第20回ファンタジーノベル大賞”を受賞したという
この作品、静かで品格のある文章にすっかり魅了されてしまいました。
ファンタジーはちょっと・・・と言う方にもぜひお薦めしたい一冊です。
物語の時代は明治、大正。
笠井泉二という孤高の建築家をめぐる6つの短編から構成されています。
共通のモチーフとなっているのはタイトルにもある“天使”。
物語とやや不似合いな“天使”と、不規則に配列された各編のため
迷宮に入り込んだような感覚に陥りながら、読み進むことになります。
依頼主が望んだ以上の建物を造る、不思議な力を持つ泉二。
老子爵夫人には「亡き夫と共に暮らせる家」を、探偵作家には
「永遠に住める家」をと、一風変わった注文に応えていきます。
建物によって癒され、憂いやわだかまりがとけてゆく人々。
物語全体に漂う深い憂いは、依頼主のものだけでなく、孤独な泉二の
悲しみでもあり、明治・大正という時代が持つ重苦しさなのかもしれません。
この厚い雲に覆われたような憂いは、依頼主が癒されてゆくのと同時に消えてゆきます。
あたかも雲の切れ間から光が射し、青空が見えてくる・・・・・そんな風に
読み手も癒され、静かな感動を与えてくれる小説だと思いました。
タイトル:みぞれ
著 者:重松 清
請求記号:913.6/シ
少しずつ、暖かい日が増えてきました。
今年は雪らしい雪も見ないまま、冬が過ぎてしまう…と思っていましたが
2月も終わりになって、やっとまとまった雪になりました。
ここでご紹介する『みぞれ』には
10代~40代という様々な年齢の主人公が登場します。
どの作品も暖かく、そして苦く、涙を誘われます。
とても読みやすい、
人によっては軽すぎると感じるくらいの文体で紡がれる「お話」に、
若干のあざとさを感じつつも、抗いきれずに引き込まれてしまいます。
著者本人があとがきで書いている
「息をするようにお話を書きたい」という言葉にも納得させられる短編集です。
最後に収められている表題作「みぞれ」もまた、
どこの家族にでもある物語です。
老いた家族が、身体の自由も言葉の自由も奪われて、
車いすの上で動けずにいるとき…。
主人公の心には、打ち消しても打ち消しきれない、
「本当にまだ生きていたいだろうか?」という問いがあります。
きっと、家族を看取ったことのある人はみな、
一度は抱く思いなのではないかと思います。
私もまた、家族に同じ問いを感じていたことがあります。
そして当人から「もういいよ。」と言われたときの気持ちは、
言葉にはできません。
言葉にできれば、小説家になれるのかもしれません。
この本を読み終わったのは、いやに明るい白い空から
ちょうどみぞれが降っている日でした。
「みぞれ」は冬の季語。
本来は、冬のはじめに降る、雨まじりの雪のことだそうです。
淋しさの底拔けて降るみぞれかな 丈草