日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ
著者:森下 典子
出版者:新潮社
請求記号:791.0/モ
資料コード:612042171他
母方の祖母は、生前お茶を習っていました。
お稽古や茶会に連れて行ってもらったり、祖父母の家に遊びに行くとお茶を点ててもらうこともあり、子どもの頃からお茶をどことなく身近に感じていました。
祖母の形見の茶器や道具の一部を母と共に譲り受け、私も自宅や実家でたまにお茶を点てて楽しんでいます。
あくまで自己流ではあるのですが、祖母の形見の茶器や道具、お菓子の用意をし、お茶を点てる。
心がすっと軽やかに、和やかになる時間です。
祖母が亡くなってから、この夏で七年。
仕事帰りの図書館で、実写映画のDVDと併せて手に取りました。
大学時代に、母からの勧めで従姉妹とお茶を始めることになった典子。
「タダモノではない」と噂の母の知人で茶道の先生でもある、武田のおばさんの指導を受けることになります。
がんじがらめの決まりごとの数々、せっかく覚えた作法も、季節や道具によって目まぐるしく変わる中で、疑問や葛藤を抱きながらの日々。
お茶を始めてから25年の間、自分の居場所を探し続け、失恋、父との別れという悲しみにも直面します。
しかしお茶の稽古を続けていくなかで、堅苦しさのその先にある自分なりの自由と生きる喜びを少しずつ見出していき、お茶の魅力に気付き、次第に惹かれていきます。
季節のうつろいを、今この一瞬を、五感を使って全身で味わうこと。
頭で考えずに、今目の前にあることに向き合い続けること。
生涯を通じ、日々が勉強であること。
そして今ここにいる、私は私のままが良い、長い目で今を生きるということ。
典子のお茶の先生である、武田先生の深い名言の一つひとつにも考えさせられます。
著者の森下典子さんは、本書のまえがきで次の様に述べています。
「世の中には、「すぐわかるもの」と、「すぐにはわからないもの」の二種類がある。
すぐわかるものは、一度通り過ぎればそれでいい。けれど、すぐにわからないものは、……何度か行ったり来たりするうちに、後になって少しずつじわじわとわかりだし、「別もの」に変わっていく。
そして、わかるたびに、自分が見ていたのは、全体の中のほんの断片にすぎなかったことに気づく。「お茶」って、そういうものなのだ。」
この一冊と出会い、忙しない日常のなかで見過ごしてしまいそうなことを、改めて教えてもらえた気持ちです。
黒木華さん、樹木希林さん、多部未華子さん出演の実写映画も下記に紹介しています。
とても美しい作品で、著者の森下典子さん自ら、茶道関連のアドバイザーとして全面的に撮影に参加されています。
ぜひ併せてお楽しみください。