読書の秋、食欲の秋、芸術の秋…
何かと言葉を冠せられることの多い秋という季節ですが、
ここ数年は秘仏御開帳が私的な秋の関心事となっています。
名著『見仏記』(いとうせいこう&みうらじゅん著)を読んだのが先か、
または『TV見仏記』のDVDを観たのが先か、
あるいは著者のお一人、いとうせいこうさんのファンだったのが先か定かではありませんが、
お二人の活動を通して仏像はなんだか凄いということに気付き、
京都の教王護国寺 (東寺)を訪れたのが見仏最初の一撃でした。
拝観の前はお寺のルールも良く知らず、信仰心も特にない自分が、
果たして中途半端な美術的な興味だけで鑑賞して良いものかと不安でした。
しかし東寺の講堂に立ち並ぶ異形の諸仏の前では、
信仰か美術かといった人間的なカテゴリー上の悩みなどは一掃され、
憤怒の表情を見せる仏像の前でさえも笑顔と勇気が湧いてきたのでした。
最近雑誌などで仏像や関連する特集をよく見かけることもあり、
見仏ビギナーとしては情報量だけは増えて欲が出始めてきています。
特に信仰上などの理由である時期にしか拝観が許されない、
いわゆる秘仏にお会いしてみたいという気持ちが高まっています。
中には何十年に一度の御開帳、あるいは絶対的な秘仏も存在し、
ひとりの人間が一生を過ごしてもお会いできない方もいらっしゃいます。
御開帳の機会が比較的多い秋という季節、
厨子の奥で何百年もの間世界を守護してきた秘仏に思いを馳せつつ、
仏像の本を開いてはもったいなくて閉じている今日この頃です。
●図書館で最近受け入れた仏像関連の本
『壊れても仏像 文化財修復のはなし』飯泉太子宗著 白水社 2009.6
『見仏記 ゴールデンガイド篇』いとうせいこう著 みうらじゅん著 角川書店 2009.4
『日本の仏像 飛鳥・白鳳・天平の祈りと美』長岡龍作著 中央公論新社 2009.3
『もっと知りたい興福寺の仏たち』金子啓明著 東京美術 2009.3
『美仏巡礼 完全保存版』日経ホーム出版社 2008.8
『仏像のひみつ 続』山本勉著 朝日出版社 2008.5
『ほとけを知る 仏像めぐりハンドブック』北進一著 シンコーミュージック・エンタテイメント 2008.4
『にっぽん心の仏像100選』上・下 NHK「にっぽん心の仏像」プロジェクト編 日本放送出版協会 2008.3
『目でみる 仏像事典』田中義恭著 東京美術 2008.1
『木喰 庶民信仰の微笑仏』神戸新聞社編 東方出版 2008.1