手づくりの服には思い出があります。
東京の叔母が年上のいとこのために作った、薄いピンクのギムガムチェックのノースリーブのワンピースが、お下がりとして私に回ってきた時がありました。胸元には同じ布で何重にもフリルが付けられ、凝った仕様でした。気にいって大事に着ていましたが、成長が早い小学生の頃なので、次の年にはサイズアウトになり、長く実家の押し入れにしまい込まれていました。母の葬儀後、生前の衣類の整理処分の時に発掘され、何十年ぶりに改めて見るとやはり丁寧な作りで、今でも十分ステキな物でした。そして思い出すのは今の私よりだいぶ若い(それでも立派な中年)の母の笑顔と日がサンサンと照る夏の一コマです。
日がだいぶ短くなったと感じる頃の話ですが、返却のカウンターにいた時、男性が洋裁の本を返却されたことがありました。ご家族に頼まれて「D門(お裁縫やお料理の本)」の本数冊の返却はよくあることなのですが、コートを自分で作ってみようという内容の本1冊のみの返却でした。
返却に来た方には決して自慢するのではないが自分で作った作品に気づいてほしいオーラが漂っていたのか、それに惹かれついつい声をかけてしまいました。
やはり今着ているコートは自分で作られたとのことでした。コートの製作は裁断するパーツも多く、裏地もすべる素材なので縫いにくく私にとってはとても難易度が高く、それ故憧れて一度はチャレンジしたいと思っていました。ボタンホールも丁寧に手仕事で仕上げてあり、洋裁男子お見事!でした。次の作品を是非見せに来てほしいと
思っています。
さて、この頃はコロナで制限がかかっていた日常がだんだん平常を取り戻しつつあります。まだまだ全員がマスクを外せる状態ではありませんが、今年は地区の夏祭りがやっと復活できると期待していますので、今から小さい子どもの甚平の製作に取り掛かっています。100・110・120サイズの3着を作る予定です。実は何年か前に80サイズで作った事があったのですが、肌触り重視で選んだダブルガーゼの生地は、
何度も失敗しやり直ししていたら端がほつれ悲惨な結果になりました。
今回はリベンジです。三着も作るのは大変でも、楽しい思い出にするためには、しばらく製作に専念するしかないようです。