何十年も前の大学生の時のこと、
ある本が気になりもう一度読んでみたいと思ったことがあった。
ただ、子供の頃読んだ本なので書名も著者名もはっきり覚えていないし、
ストーリーもあやふやで、
「みどりの蛇が女の人になるちょっと変わった不思議な話」
この程度の記憶しかなかった。
現代ならばインターネットで検索すれば
何らかの情報が得られるかもしれないけど、
そんなものは無い時代。
どのようにして探したのか…。
この部分の記憶もあいまいなのだが、
たぶん文庫の目録や図書案内を見ていてひらめいたのだと思う。
書名がわかった時のうれしさだけは今も鮮明に覚えている。
友人に報告し、一緒に喜んでもらった。
ところが、それから先のことはさっぱり覚えていない。
探し求めていた本だというのに読んだ記憶が全くない。
「黄金の壷」(または「金の壷」)というタイトルのこの本、
最近またなにやら気になり読んでみたくなった。
作者のE・T・A・ホフマンは18世紀のドイツの作家で、
有名な「くるみ割り人形とねずみの王様」もその作品の一つだ。
「黄金の壷」は200年近く前の1814年に書かれている。
日本でいえば江戸時代、古めかしい話なのだろうなと思って
読み始めたのだが、意外なことにそうでもなかった。
みどりの蛇に魅せられ、現実と魔法の世界を行ったり来たりする主人公。
みどりの蛇の父親である火の精サラマンダーと魔法使いの老婆との争い……
(?最近こんな話があったような…???)。
古さを感じさせない不思議な物語で、映像化したら面白いかもしれない
などと思ってしまった。
考えてみれば子供の頃このような幻想的な物語は少なかったと思う。
それで新鮮に感じ印象に残ったのだろう。
学生時代は現実的な小説ばかり読んでいた頃。
読んでもピンと来なくて記憶から消えてしまったに違いない。
そして現代。昨今のファンタジー小説ブームで
それ程のファンでなくても洗礼は受けている。
違和感がなかったのは当然かもしれない。
この本は図書館に数冊所蔵がありますが、
「筑摩世界文学大系26」ドイツロマン派集(第一所蔵)以外はすべて書庫。
残念だけれどもやはり“時代”を感じてしまう。
児童書(世界こわい話ふしぎな話傑作集 ドイツ編「黄金のつぼ」)もあるので、
気になった方、又は懐かしいと思いの方はぜひどうぞ。