気づけば師走、あとわずかで新しい年を迎えようとしている。
いつからこんなに一年がたつのを早く感じるようになっただろう。子どものときは「あっという間に」
時間が過ぎるのは寝ている時間と遊んでいる時間だけで、一年はもっと長いものだったような気がするのだが・・・
今年の年頭に当たり、ずっとやりたいと思っていたはずのことを思い出し、何か一つ始めようと決めた。いつの間にか過ぎていってしまう時間に抗いたいと思ったのだ。思いついたのが「白糸刺繍」。
10年以上も前、慌ただしくて自分の時間が持てないでいたころ、図書館で返却された資料の中に「白糸刺繍」の本があった。返却カウンター業務では、返却された資料の中に利用者の忘れ物が挟まっていないか、パラパラとぺージをめくってチェックすることを行っているのだが、その「白糸刺繍」の本をめくっているうち、紹介されている作品の美しさにすっかり魅了されてしまったのだ。
いつかこんな刺繍が刺してみたい・・・
白糸刺繍はイタリアが発祥でそれが貿易などを通じてヨーロッパ各地へ広まったとされているらしい。白の麻布に白糸で刺繍が施されており、織り糸を抜いて糸でかがることで様々な文様が生まれ、まるで白磁のような美しさがある。
「白糸刺繍」の本を見るたび、いつかは、いつかは、と憧れるだけだったのだが、刺繍が習いたいと考え始めた頃、何という偶然、付き合いのある公園ボランティアの中に白糸刺繍の先生がいると知り、とんとん拍子で教えていただけることになった。
刺繍針を持つのは高校の家庭科以来〇分の一世紀ぶり。何にせよ、針に糸を通すのだって一苦労。最初に取り組んだのは織り糸を4目ずつ数えながら刺していくカウントステッチ(こぎん刺しに似ているかも)、細かい織り糸を数える作業にさえ手こずる始末。
少しずつ慣れて、刺したものでブローチができたり袋ができたりする。一針進んで糸を整え、また次の一針。一針ずつしか進まない刺繍はもどかしくなるほど時間がかかる作業だが、無心になると同時に心が穏やかになっていくのを実感する。真っ白の布に白の糸が絡み合って新たな空間の世界が広がるのは何とも言えず心地よい。
日々時間を見つけてはチクチク。刺してみたい図案に出逢うとワクワクが止まらない。図書館の本がつなげてくれた刺繍との出会いは私に充実した時間を届けてくれている。
今日も誰かと本との素敵な出会いが図書館で行われているに違いない。
