書名:トリセツ・カラダ
著者: 海堂 尊
出版社:宝島社
請求記号:M490カ
チームバチスタの栄光」「ナイチンゲールの沈黙」など、数々の医療ミステリーで知られる海堂尊氏。外科医、病理医を経験した現役の医師ならではのストーリー展開に、のめりこむようにページをめくったのは私だけではないでしょう。
そんな海堂氏が体について、誰にでもわかりやすいように著したのがこの「トリセツ・カラダ」=体の取扱説明書です。
最近は健康志向で、テレビや雑誌でも病気についての番組や特集が大変多くなりました。それらを見たり読んだりして体について興味を持っても、図書館の医療コーナーの棚に並ぶ本の多くは、専門的で"とっつきにくい"と感じる人も多いのではないでしょうか。
そんな人にぜひお勧めなのが本書です。
「カラダ地図を書けるようになることが目標」とあるように、本書を読めば自分の体にはどのような臓器がありどのような働きしているのか、体はどのような仕組みで生命を維持しているのか、といった体全体のことがだいたいわかります。
一般的な医療の本とは異なり、「体の血管の長さを合わせると6000km、7人分の血管があれば赤道を1周できる」というように、医師+作家の目線で書かれた内容は大変興味深く、読み物としてもとても楽しめます。
難しい専門書を読まなくても、この1冊で体全体を一般的な知識として大まかに把握できるのが、大きな魅力といっていいでしょう。
自分の体を守るためには、まず体について知っておくことが何よりも大切です。本書を読んで自分の体を理解しておくと、少し異常が起こっても何となく推測することができます。
それによって病気の早期発見につながり、軽い症状に対しては必要以上に不安になることもなくなると期待できます。
本書で自分の体について興味をもたれた方は、続編ともいえる「トリセツ・ヤマイ」も出版されています。こちらはカラダの仕組みと病気がさらに詳しく説明されていて、少し難しいのですが読み進めていくと、さらにマニアックな知識を得ることができます。
書名:「イン・ザ・プール」 「空中ブランコ」
著者:奥田英朗
請求記号:913.6オ 年末年始の忙しい時の読書は気分転換が一番です。
一話が50から60ページ前後で完結のため、ちょっとあいた時間にサラッと読め、思わずニンマリ(この要素が最大のウリ)できる本です。
ここに登場する人物たちは、一風変わった悩みをかかえ、つい伊良部総合病院の薄暗い地下へ迷い込んでしまうのです。そこには、「いらっしゃーい」という場違いに明るい声(新婚さんいらっしゃいのあのイメージでしょうか)の持ち主、精神科医の伊良部先生が待ち構えています。
この先生の破天荒さは、離れて見るぶんには最高に面白いのでしょうが、いざ自分に関わってくると最悪。小さな傷口をますます大きくするようなことを、平気でするような人物です。医者自身が性格的に(外見的にも)問題がある人物だったら、診断・治療はどうなるのでしょうか。もちろんすんなりいく訳がありません。伊良部先生のやりたい放題に、散々ふりまわされることになるのです。
それでも患者達が救われないかというと、そうでもないのです。彼らは気づくのです。ストレス皆無の伊良部先生を見て、そんな生き方もありだと。
伊良部先生の常道を逸するような能天気な言動で、更なる困難を抱え込むはめに陥り、自分の抱えていた悩みがふき飛ばされ、それを克服して悟っていきます。
伊良部先生という人物は、大病院の跡取り息子として甘々に育てられたので、今までやりたい放題したい放題に行動してきました。
財産目当ての妻と泥沼の離婚訴訟中で、来た患者には何かと理由をつけ注射する注射フェチで、食欲旺盛で体形はカバのような人物です。こんな彼が医者になれたのは、同期のうわさでは「皇族の御成婚の特赦」というトンデモ医師なのです。
こども相手の小児科でもこどもと同じレベルでケンカして勤まらず、結局精神科になったというありえないお医者様です。
患者たちは、常識や理性が邪魔して絶対にできなかったことを、何のためらいもなくする伊良部先生にあきれつつも、どこかうらやましさを感じているのです。
「義父のヅラ」に出てくる患者さんは、伊良部先生と同期のお医者さんですが、大人として振舞う中で、本来の陽気な性格を封印し、真面目に理性的に行動することをしいられた中で、ストレスを溜め込み、義理の父のカツラを剥ぎ取りたい衝動にかられるのです。
こんな面白いこと伊良部先生がほっとくわけがありません。
どうかきまわすかお楽しみください。