| 2012/02/03 | スタッフのおすすめ本!(2月) | | by 図書館スタッフ |
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書名:壊れても仏像-文化財修復のはなし-
著者:飯泉太子宗
出版社:白水社
請求記号:718.3/イ
著者は、大学で文化財保存を学び、卒業後、美術院国宝修理所というところで国宝や重要文化財の仏像の修復に携わり、現在は関東を中心にNPO活動による仏像・文化財修復を行なっている、という経歴の方です。ですのでこの本は、著者が実際に修復に関わったときのいろいろなエピソードを軸に話が進んでいきます。その中で個人的に好きなものを挙げてみると…
あの!三十三間堂の千一体の千手観音の修理に関わった。千手観音には一から番号がふってあり、当時は六〇〇番代を修理していた。だがその時点ですでに、初めの頃に修理した一番代の像は少し傷みかけていた。
……なんだか「賽の河原で石を積む」的なことを連想してしまいました。(例えとしては全然適切でなかったですかね。)文化財の修理はまさに時間や自然との追いかけっこのようなものであり、劣化するのをどうしても止めたかったら、像をステンレス製の容器に入れ、安定したガスを注入して宇宙空間に打ち上げる、ぐらいのことはしなければならないのだそうです。千手観音が大空のかなたに浮かんで永久保存されていると思えばありがたくないこともない…ですが、この眼で見て拝めなければあまり意味はないし、やっぱりつまらないですね。
もうひとつ。
個人宅の庭に建つ小さなお堂の中の観音さまを見せてもらったら、ペンキで(!)赤、金、緑色など極彩色に塗ってあって、ゴレンジャーみたいなことになっていた。聞けば、昔おじいさまが自らペンキを塗り直したらしい。
……「なんちゅうことをするんだ!」とつい思ってしまいますが、いや待て待て。仏像というのは美術品・文化財でもありますが、その前にまず信仰の対象であり、拝むものなのでした。そのおじいさまは仏さまを大切に思うあまり、完成当初にそうだったであろう色鮮やかな美しい姿に戻したかったのです。シロウトは、金ピカよりも、彩色や金箔が剥がれ落ちた木地のままの姿の仏像の方が、由緒ありそうでありがたい気がします。なので、古いまま、あるいは現状を維持するように修理するのが当然、と思っていましたが、拝む対象-いわば実用品としての仏像であるならば、新品同様の状態に戻すのが最高の修理である、という考え方もあるわけで、実際、昔の修理は皆そちらのやり方です。どの方法が絶対に正しいというものではない、と著者は云います。
仏像というのは、どんなに保存状態が良くても時間が経てば少しずつ壊れていく。有名な古い仏像で、まったく修理されたことのないものはほとんどないのではないか、という箇所を読んで、ハッとしました。云われれば至極当然のことですが、恥ずかしながらあまり考えてみたことはなかったのです。千年以上も昔の仏像が当たり前のように残っていて美しい姿を今でも見せているのは、仏像を大切に思い、信じ、残していきたいと願う-そんな、人の想いの連鎖があるからだ、と著者は云います。そして、そういう想いの連鎖にこそ古い仏像の価値はあるのだ、と。昨今は仏像ブームですが、これからは“人の想いの連鎖”にも思いを馳せて仏さまを眺め、拝むことにしよう。そして、私の小さな想いもその連鎖の中に加われたらいいな…と思いました。
この本には他にも、仏像に関する基本的な知識や、著者自身の手になる写真、イラストなどなどたくさん載っています(またこのイラストの仏像がユーモラスで可愛いらしいのです)。楽しみながら奥深い世界に触れることのできる一冊です。
書名:父さんの手紙はぜんぶおぼえた
著者:タミ・シェム=トヴ 母袋夏生 訳
出版社:岩波書店
請求記号:949/シ
児童書の中から、心温まる海外ノンフィクション小説を紹介します。
第二次大戦中、ユダヤ人がナチスに迫害されている時代、ユダヤ人であることを隠すため、生きるために名前も変え、ばらばらに暮らすことになった一家。
主人公の10歳のユダヤ人少女は、リーネケと名前を変えて、ユダヤ人の支援者である医師の家で暮らします。
リーネケの元に届く、お父さんからの秘密の手紙。それは、心のこもった絵手紙でした。
ナチスに見つかると周囲にまで危険が及ぶために、読み終わると、すぐに焼却されるはずだった手紙…そこで題名にあるようにリーネケは『父さんの手紙はぜんぶおぼえた』のです。
しかし実は、医師の手によって土中深くに埋められ、戦後リーネケの手元に戻りました。
リーネケもお父さんも、生き残ることができたのです。
明日はみつかって殺されるかもしれない。追い詰められた重苦しい日々の中で、このような手紙を書くことができたこのお父さんの子どもに対する深い愛情、心細い気持ちをこのお父さんの手紙で励まされ支えられた娘。
とても重たい内容に感じられるかもしれませんが、父さんからの絵手紙が本当に娘に対するやさしさがあふれていて、心があたためられる、すてきな本です。
本の中で、お父さんの絵手紙を交えながら、リーネケがかつての生活を語っています。
親の愛情とはなにか、優しさとは、強さとは、改めて考えさせられました。
本の印象がいつまでも強く残っています。
戦争中わが子のために書いたものとして記憶にあるのは、『ふしぎなオルガン』リヒャルト・レアンダー/作(岩波少年文庫)(943/レ)です。作者が、軍医として戦地に赴任中、わが子のために書いた物語です。
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