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資料番号:630323116
このコラムを執筆するにあたり、とにかく気軽に観ることができて笑える作品にしよう、という思いがありました。私は普段韓国ドラマをよく観るのですが、ストーリーが緻密に練られていて面白い反面、いつもどこかに恨み・嫉妬などの感情が渦巻いており、観終わってどっと疲れてしまう時もあります。今回はそんな感情が一切なく、とにかく楽しい作品を求めていました。どの作品にしようか迷っていたところ、ここ数日テレビで三谷幸喜監督を目にすることが多く、彼の作品はコメディ要素があり、かつストーリーも面白く、この「記憶にございません!」を選ぶことにしました。
まず、映画のタイトルである〝記憶にございません”はロッキード事件で証人喚問を受けた政治家が喚問に対してこの言葉を連発し、当時流行語にもなりました。
主人公の総理大臣・黒田啓介(中井貴一)は傲慢で国民からも嫌われる存在で支持率2.3%という憲政最低を記録しており、そんな中、演説中に投げられた石が頭に当たり記憶を失います。記憶を失ったことでかつての横暴な人間性を忘れ、周りの人との新たな関係性を築いていく過程を描いています。登場人物の一人ひとりがユーモアに満ち溢れていて、何度もゲラゲラと笑わされ、出演している俳優もチョイ役であっても実は大御所で驚かされたりと、あっという間の2時間でした。
私がこの映画の中で印象的だったのは、黒田の小学生の時のエピソードです。当時作文に「将来は総理大臣になる」と書いていましたが、周りからは「おとなしいから無理だ」と言われていました。しかしそれは自分自身を出し切れていないからであり、自分が変わるきっかけを求めていたのでした。そんな時にサッカーボールが頭に当たったことをきっかけに明るい性格に変身したのです。そして夢であった総理大臣に就任したのです。人は変わるときになにかの「きっかけ」があれば変われるのかもしれません。なにか自分の背中を力強く押してくれるものがあれば変わることが可能なのでしょう。
そんなことを感じた映画でしたが、そんなに難しいことは考えずに観られる、笑いと感動が織り交ざった作品で、観たあとに心が温かくなりました。
日々の仕事や生活に追われていても、娯楽によって心をほぐす時間も必要ですね。