著者:杉本 昌隆
出版社:文藝春秋
資料コード:612339619 他
請求記号:796.0/ス
「将棋の藤井聡太八冠」といえば、今年、最も話題となった言葉を選ぶ「新語・流行語大賞」に「藤井八冠」がノミネートされ、内閣総理大臣顕彰を授与されたこともあり、将棋に詳しくない方でも知ってる方は多いのではないでしょうか。
この本は史上初の八冠を達成した弟子・藤井聡太八冠の師匠で「日本一の師匠」とも呼ばれる杉本昌隆八段のエッセーで、2021年4月から2023年4月に週刊文春に連載されたエッセー100号分と先崎学九段との対談が収録されています。
杉本八段のエッセーの連載は120回を越えました。
発売当初から話題になり、中央図書館の書架の脇に掲示されている「予約多数ランキング」にも早々にランキング入りし、今も多くの予約が入っています。
私は、「藤井八冠」と同じく「新語・流行語大賞」にノミネートされた「観る将」で藤井八冠と杉本八段のファンなので早速手に取りました。
エッセーは藤井八冠のことだけではなく他の弟子のこと、将棋界のことを時に「自虐ネタ」を交えながらユーモラスに綴られています。
・先崎学九段との対談では、週刊誌の連載なのに、藤井聡太八冠を心配して「週刊誌に気をつけなさい」
・藤井八冠の対局後や翌日は取材で忙しくなる確率が高くなることから、手帳には自身の対局予定に加え、藤井八冠の対局予定も書き込んでいること。
・昨年の竜王戦に合わせて行われた「おやつ選びコンテスト」に杉本八冠もインターネットで投票したこと。
・「若い人にはおやつ」というルールを自分に課している杉本八段の、弟子だけではなくタイトル戦の記録係へ配慮したこと。
・弟子に「負かされる悔しさは頼もしさで相殺され、まんざらでもないのだ。」
・棋士にとっての最大のプレゼントは「今の将棋ファンがこれからも末長くファンでいてくださること」
・「藤井八冠から貰いたい、というか期待するものは、彼自身の健康維持。それのみだ。」など、
杉本八段の人柄がわかるエピソードの数々に、杉本八段のファンになった方も多いのではないでしょうか。
連載百回目のエッセーは、「連載百回の”感想戦”」として、藤井八冠がプロデビューして間もない頃から今に至るまでの、藤井八冠のご家族やファン、周囲の大人たちによる配慮があったことも記されています。
そして杉本八段の研究室で藤井八冠と永瀬拓矢九段が研究会をやり、隣の部屋で杉本八段が藤井八冠が寄贈したパソコンでエッセーを書いているシーンは、目に浮かぶようでした。
連載が始まった当初は二冠だった藤井八冠が連載百回目では竜王位を獲得して六冠になり、この原稿を書いている今は八冠。タイトル戦は19期連続で獲得しています。
エッセーが連載されている週刊文春は市内の図書館全館で所蔵していますので、本と合わせてご利用ください。