| 2009/04/10 | スタッフのおすすめ本!(4月) | | by 図書館スタッフ |
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タイトル:一色一生
著者:志村 ふくみ
請求記号:753.0/シ
もう、お花見はされましたか?
私は桜の季節になると、この本を思い出します。
確か、中学校の時に国語の教科書にのっていて
とても鮮明にその情景が浮かび上がった記憶があります。
筆者は染色家で、植物を使った染色をしていますが、その植物の色は
鮮やかな色の花からではなく、茶色い枝や樹皮を煮出して得られるのだそうです。
桜は花びらを煮出しても、灰色がかったうす緑にしかならず、
幹を煮出すとあの桜色が得られるそうです。
普段、つい満開の花に目がいってしまいますが、その一瞬のために樹は一年間、
幹や枝などの樹の命全体でじっと待っているということをこの本を通して知りました。
その時から、樹への見方が少しづつ変わったような気がします。
この本では、染めや織物について書かれていますが
とてもわかりやすく専門知識がなくても楽しめます。
また、それだけではなく自然について、芸術について、人生について、
普段気付かずに生活していることにハッと気づかせてくれるとても素敵な本です。
植物が芽吹き、かわいらしい芽が出てくるこの季節に、ぜひ手にとって見てください。
書名:還るべき場所
著者:笹本稜平
請求記号:913.6/サ
4年前の7月、主人公の八代翔平は、最愛の人、栗本聖美(きよみ)と共に
世界第2位の高峰、K2の未踏の東壁を登攀(とうはん)していた。
翔平がトップで登り、ロープで結ばれている50メートルほど下から清美が続く。
標高8000メートルを超え小雪混じりの烈風が吹き荒れる中、
上部で雪崩が起きる。
翔平は視界の効かない清美の方へ声をかけるが返事がない。
しかしロープには彼女の重みがある。
彼女が再び体制を立て直せばなんとかなる。大丈夫。
その時、振動を感じていたロープの加重が消えた。
ロープをたぐり寄せると、鋭利な刃物で切断されていた。
彼女が、自分を助けるために犠牲になった、と苦しみ続け
その後4年間、山に登らなかった翔平。
心臓疾患で自社製の心臓ペースメーカーを使い、
8000メートル峰に挑戦を抱く、会社経営の神津。
幼い頃に父を山で亡くし、大学時代に雪崩を目の当たりにして、山を離れた秘書、竹原。
登山を共にした亮太や仲間たち。
笹本氏の丁寧な山の描写が、映像のように浮かびます。
感情を込めず、淡々とした自然の迫力の描き方が、
人間の小ささを思い起こさせます。
山でのアクシデントは息を呑み、神のみぞ知る、という気持ちになります。
長編ではありますが、熱中して読み進んでしまう一冊になることでしょう。
大きな山は、自分の方から向かわなければ出合えません。
それぞれ還るべき場所はみつかったのでしょうか。