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2012/12/27

落ち葉

Tweet ThisSend to Facebook | by 図書館スタッフ

師走も下旬ともなれば、坂道も庭も落ち葉だらけだ。落ち葉で思い出すのは、
杜甫の「登高」という詩だ。

無邊の落木 蕭々として下り (辺り一面の木から、落ち葉が悲しげに落ち)
不盡の長江 滾々として来る (揚子江の水は、つきることなく流れ下る)
万里悲秋 常に客となり (故郷を遠く離れて、今年の秋もまた寂しく迎える)
百年多病 獨り臺に登る (いつも病気を抱え孤独の私は、家族を思って今日高台に登る) (注1)

杜甫はこのとき独りぼっちで、高齢で病気を抱えていたらしいが、現代医学と科学の進歩の
おかげで、杜甫のその年を越えても尚元気な自分には、落葉樹ほど面白いものはない。
4月の新芽、5月の若葉、11月の紅葉と続いて12月の褐色の落ち葉まで。
鮮やかな1年を展開してくれる。

中央図書館の裏山にあたる城山公園の落葉樹林は前夜冷え込みのあった、よく晴れた日の
昼間、12月の第1週から第3週にかけて、風のあるなしにかかわらず、はらはら散り続けていた。
落下の瞬間を宮沢賢治風に言うなら、葉は元の幹に向かって

「お母さん、さよなら。僕たち旅に出るよ。さよなら、さよなら。」

と声をかけている。木の方は、

「そうかい。じゃ気をつけてね。あとは知らないからね。お母さんはここにいつまでもいるよ。」

というように寒空の中に立っている。別れる方も見送る方も、ちっとも悲しげではない。
この落ち葉が「枯葉」となると、ジャック・プレヴェールはこう書いている。

ああ、思い出しておくれ
私達が愛し合っていたあの頃
この世は今よりも美しく
陽光も火と燃えていた
枯葉が鋤に寄せられる今
どうして忘れることが出来よう
枯葉が鋤に寄せられる今
想い出と悔恨とが心に戻る
そして北風がそれ等を集め
冷たい忘れの国へと運んでゆく (注2)
 
別れた女のことが忘れられないと、枯葉どころか何を見ても思い出と後悔まみれなのは、洋の
東西を問わない。

が、実際の所、大地に落ちた葉っぱは、さくさくふかふかでその中は、虫たちの暖かな寝床に
なったり、翌春の野草たちの芽をふんわり包む布団になったりすることだろう。ゆくものも留まる
ものも、自然の営みを淡々と実行して、後悔やためらいは、微塵もありはしない。そこにはただ
決然たる別離があるだけだ。

こういう一生を送る落葉樹の存在は、ともすれば平穏無事を願うあまりに日常に固執し鈍感に
なりがちなある種の人間にさえも、少なからぬ作用を及ぼしている。それは、季節の推移に
対する感慨や、去りゆく者に対する哀惜の思いを募らせることはもちろん、変化やチャレンジを
恐れない感情を育むという点においても、情操的影響を知らず知らずの内にその心に及ぼして
いるのではあるまいか。

(注1)書き下し文は『新釈漢文大系19 唐詩選』(928/シ/19)より引用。現代語訳注は筆者による。
(注2)「ベストナウ21 シャンソン」(C7CK/シ)の解説書より引用。
 
 

 

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