鳥類学。
個人的にはあまり馴染みのない単語に興味を抱いた理由は本の表紙でした。
逆説的にもあるいは挑戦的にも捉えられる書名も目を引きますが、中を開くと各章のタイトルや目次もさまざまなリスペクトに富んでいる構成でとても興味深く感じました。
鳥類学者という職業に携わる著者は「鳥」に関するさまざまな考察を行います。
それらは実在する鳥であったり、空想上の鳥であったり、時には鳥そのものであったりと多彩です。
鳥類学者である著者が小笠原諸島に降り立った事を皮切りに、多種多様な鳥の名前が飛び交います。
例えば、第1章では研究のため小笠原諸島を訪れた著者と共同研究者による鳥の観察から始まり本筋から逸れず適度に程よい各種のエピソードが語られています。
そして章が進むに連れて鳥類学者・動物学者・植物学者・地質学者等、各種のプロフェッショナルの方々が調査している状況が著者の視点から表現されていきます。
それらは決して堅苦しいものではなく軽妙な比喩表現によって親しみやすい雰囲気の文体に思われました。
また、調査先で発生したハプニングのことも書かれていて時にエッセイのように心に響きました。
鳥類学の研究を行うために訪れた先で調査地が消失することもあれば逆に新しい土地が生まれることもあり、自然を相手にすることはなかなか一筋縄ではいかないようです。
軽妙さのある筆致には人間味があり親しみやすさを感じました。
鳥類学者による調査報告や調査結果。
一見するとどことなく堅苦しい文面になりがちな印象ですが、ある意味でその印象を覆す一冊です。
書名:鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。
著者:川上和人
出版社:新潮社
資料コード:611923125
請求記号:488/カ