| 2008/10/17 | スタッフのおすすめ本!(10月) | | by 図書館スタッフ |
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タイトル:千年樹
著者:荻原浩
請求記号:913.6/オ
荻原浩の作品ごとの作風の違いにいつも驚かされます。
『なかよし小鳩組』『神様からひと言』のような
明快、軽快、どんどん読み進められる娯楽小説あり、
『噂』や『コールドゲーム』のようなサスペンス、ミステリー系小説あり。
そして今回紹介する『千年樹』は中世、近世、近代、現代それぞれの時代に生きる人と、
人に寄り添って生きる不思議な大樹との関わりを描いた内容で、
既存のジャンルに分けられないストーリーになっています。作者の多才ぶりに感嘆します。
おすすめする『千年樹』の冒頭の物語は平安の世に、地方に赴任したある国司が主人公です。
何の恐れも抱かずに、己の仕事に邁進しようとした矢先に、
信頼できると思っていた家来に裏切られ、家族ともども、樹海の海に捨てられる。
生き残る術を持たない一家は樹海をさまよい、
ただひたすら潮騒の音をたよりに山頂へ上ってみればそこは・・・。
冒頭の物語が、その後に登場するそれぞれの物語を上手くつないでいきます。
様々な人の心模様、時代描写が見事です。
人の心の深淵をのぞき、哀しさ、切なさ、
おそろしさが入り交じる不思議な読後感を与えてくれる本です。
一気に読み切ってしまうことは間違いありません。
荻原さんの新境地、ぜひ読んでみてください。
タイトル:ヒツジの鍵
著者:若月かおり
請求記号:913.6/ワ
「あなたの大事なあの人が蘇ります」
もし自分にとって大切な人が失われたら。
そして、その人を取り戻す方法があったとしたら。
4人の青年が主人公のサイエンスフィクションです。
題名はおそらく、1996年7月に世界で初めて生まれたクローン羊「ドリー」から取られています。
子どもや愛する人を失った人々が、遺伝子技術や代理母ビジネスによって、
故人のクローンを創り出すことが可能となった日本が舞台です。
クローンは“魂”まで複製することはできない。
クローンチャイルドを創り出した「親」たちとクローンたちとの、
微妙で哀しい人間関係が描かれています。
クローンを題材にした作品はいくつか読みましたが、
ここでは人として生きる強さや姿勢よりも、
ただクローンとして生まれた哀しみが感じられます。
この本には、ハッピーエンドはありません。
だからこそ、ハッピーエンドがお好きな方にお勧めしようと思いました。
日本でも実際、1998年に国内初のクローン牛が誕生しました。
続けて世界では、猿やマウスなど次々とクローン生命が誕生しています。
哺乳類の適用が確認されたことから、当然人間にもクローン技術が可能なことは証明されました。現在各国においてクローン技術の人への適用体制は、
人権的・倫理的側面において否とされています。
それでも、こうした小説がフィクションでなくノンフィクションとなる。
その可能性があることを考えさせられた一冊です。