タイトル:教団X
著者:中村文則
出版社:集英社
出版年:2014年
請求記号:913.6/ナ
資料コード:611720490
私は、中村文則さんの作品が好きでよく読みます。
映画化や芥川賞受賞作品などもあり、ご存知の方も多いと思います。
なかでもとても読み応えのあった『教団X』という作品を
今回は紹介しようと思います。
主人公の楢崎が、自分の前から突然姿を消してしまった女性を
探し始めるところから物語は始まります。彼女の消息を辿っていくと、
ある2つの宗教団体へと行き着きます。
一方は、何故か人を惹きつける
魅力を持つ不思議な老人を中心とした集団、もう一方は、どこか
気味の悪さを感じさせるカルトのような教団でした。
この教団に関わる人たちの、様々な事情や闇、欲望や快楽が複雑に絡まり、
徐々に教団は危険な方向へと暴走し、皆が大きな事件へと巻き込まれて
いきます。
結構な長編です。内容が深くて、様々な問題提起に繋がっていて、
読み応えがあります。
“教祖の奇妙な話”という枠で語られている部分では、
神とは何だろうかという話に始まり、人間の脳や“私”という意識の発生の
起源についての話、宇宙や生命の誕生、運命の話にまでテーマが
広がっていきます。相対性理論や量子論の話にも触れています。
さらに終盤では、貧困や紛争、世の中の不条理な仕組みについて
登場人物が語る場面も出てきます。私は、読み進めていると、
興味がどんどん膨れていきました。同時に、一体どうなって
しまうのだろうという緊迫感にも、読み進める手が止まらなくなります。
そして、後ろのページに参考文献リストがあるので、
広がった興味や好奇心を読後にも満たすことができます。