タイトル:鑑定士と顔のない依頼人
監督:ジョゼッペ・トルナトーレ
請求記号:D7BH/カ
資料コード:63030734—6
この映画の主人公はヴァ―ジル・オールドマン63歳。美術品への造詣が深く、誰しも一目置くほどの優れた鑑定眼の持ち主。西洋美術鑑定士でもあり、世界中の美術品を仕切る一流オークショニア(オークションの競売人)。オークションに当たっては作品の持つ価値を解説し、妥当な額から値段をあげて価格を競わせる、その手さばきは実に見事だ。
しかし、相当にクセが強め。美術品に触る以外には食事中ですらずっと手袋をはめているという接触恐怖症。さらに、一人で食事を楽しむ行きつけの高級レストランではヴァ―ジル専用の食器棚があり、彼の名前の入った皿やグラスが用意されているほどの潔癖症。
ヴァ―ジルの唯一の愉しみは豪華な邸宅の隠し部屋でソファに腰かけ絵画コレクションに包まれること。広い壁にかかった数多くの額はすべて女性の絵で、彼にまっすぐ視線を向けるよう配置されている。どうやら彼にとっての女性は絵画の彼女たちで、生身の女性には触れたことすらないらしい。
しかも、これらの絵画はヴァ―ジルが自分のオークショニアの立場を利用し、贋作と紹介した後低い額からオークションを始め、知人に格安で落札させたのち引き取ったものだ。
ある日、若い女性クレア・イベットソンから両親の遺した家具や美術品の鑑定を依頼された。大きな屋敷で広間の隠し扉の向こうに住みもうすぐ27歳になるクレアは、極度の広場恐怖症でもう何年も館から出ておらず、使用人すら彼女には会ったことがないという。鑑定の依頼をしておきながら声だけで姿を現さないクレアにヴァージルはいらだつが、地下室で何か相当に価値がありそうな機械部品の一部を見つけたことでこの屋敷に興味を持つ。さらに別の部品を見つけようと何度か屋敷に足を運び扉越しにクレアと接するうちに、ヴァージルはすっかりクレアに夢中になり、初めて恋を知った青年のように彼女に翻弄されるようになる。
ついにクレアに実際に会い、親密になり、ともに将来を約束することになったところで、物語は思いもよらない展開を見せる。
「本物」と「偽物」、「真実」と「嘘」が交錯する中で彼が手に入れた「本物」とは・・・
序盤から映画の世界にどんどん引き込まれ、131分の長さを感じる間もない展開でいつの間にか主人公と共に迷宮に迷い込んでしまったあなたは、エンドロールが流れ始めると「ん?ちょっと待って?どうしてこんなことになった?」と唖然としてしまうかもしれません。
気を取り直したところでいくつかの推理を思い浮かべ、伏線回収のためにもう一度最初から見たくなることでしょう。
この映画の見どころはヴァージル役ジェフリー・ラッシュの名演技。孤独に身を置いた偏屈な老鑑定士が次第に恋に翻弄される変化が見事すぎて、一緒にハラハラドキドキさせてくれます。友人の役でドナルド・サザーランドが出演しているのもうれしいところ。さすがの存在感です。
もう一つの見どころは美術品の数々。特にヴァージルの絵画コレクションは、あれはルノアールかな?あちらはセザンヌっぽいな?その隣にあるのは・・・美術書で見たことがありそうな絵画ばかり(エンドロールで作品が紹介されています)。ヴァージルの住む白亜の豪邸は美術館さながら絵画が飾られ、ため息が出るほど素敵。クレアが住む古びた館の壁一面に描かれた絵も調度品も一つ一つが素敵で、画面にくぎ付けになってしまいます。
稲城市立中央図書館には、監督のジョゼッペ・トルナトーレが映画の構想のために文章化した『鑑定士と顔のない依頼人』(61163949-7)の所蔵もあります。合わせてお楽しみください。