書名:イサム・ノグチ-宿命の越境者(上)(下)
著者:ドウス昌代
請求記号:712.5/ド
この本を読んだきっかけは、イサム・ノグチの母親レオニー・ギルモアの
伝記映画「レオニー」を見たことでした。
明治の頃、アメリカで日本人の詩人と恋に落ち、
生まれた幼子を抱えて日本に来てみれば、
実はその男にはすでに妻がいて、
結局日本で日陰の女として人生を生きることとなった
女性の物語です。彼女が遺した息子が後に名声を得たイサム・ノグチです。
20世紀を代表する偉大な彫刻家とまで賞賛されたイサム・ノグチですが、
彼の生涯をこれほど詳しく紹介した評伝はこれまでありませんでした。
日系アメリカ人の私生児という生い立ちは晩年まで影を落とし、
波乱に満ちていましたが、作品は常に新しさを追求し挑戦者としての
姿勢を貫き通しました。
イサム・ノグチはその気難しい性格にもかかわらず、会う人々を魅了し、
多くの理解者を得ていますが、帰属する国がない孤独感は克服できなかったと
言います。息子の才能を見いだしアーティストに導いてくれた母への思い、
父との確執、そして多くの恋人たちとの関係を内面まで深く踏み込んだ描写は、時には切なさを感じさせ、物語を読むように引き込まれていきます。
集大成である札幌のモエレ沼公園は、完成を見ることなく亡くなりましたが、
彼の世界観が壮大な大地に表現されています。
この夏、北海道に旅行に行く予定ですが、是非とも訪れて、
彼の魂に触れたいと思っています。
* 中央図書館所蔵の
『イサム・ノグチ 生誕100年』エクスナレッジ
(請求記号 712.5/イ)
併せて読むことをお勧めします。