秋田で独り暮らしをしていた母に東京へ来てもらってから、
実家が空き家になり、今年になってようやく重い腰を上げて姉と
ふたり秋田へ帰省して家の中の物の片づけ作業をしました。
古い農家のそれなりに広さのある家屋で母が何一つ捨てていなかったので、
都合3回の帰省でクリーンセンターの大型トラック3台分を処分。
こういう時は一切の感傷を捨てて「これを残しておいたとして、
その先誰が使うのか」を判断基準にするしかありません。
食器、衣類、布団、机、本棚、タンス、一切合切思い切りよく
トラックに載せてもらいました。
それでもどうしても捨てられずに東京へ持ち帰った何点かのうちのひとつが、
母の机の抽斗から出てきた私が生まれた時の母子手帳です。
今の母子手帳と違い、出生時の体重と取り上げてくれた
お医者さんの記載以外何も書かれていませんでしたが、
「まさにこの日から私の人生が始まったんだ」という、
私だけの貴重な記録だと思うと、とても処分する気になれませんでした。
稲城市では「ブックスタート」事業として市内で生まれた赤ちゃんに
図書館が選んだ絵本の中から一冊をプレゼントしています。
新しい命の誕生をお祝いし、赤ちゃんと保護者の方が共にあたたかく
豊かな時間を過ごしてくれますようにという願いがこめられています。
保健センターで行われる3~4か月児健診で
健診が終わったばかりの親子さんに好きな絵本を選んでいただき、
母子手帳にスタンプを押します。
私も何年かブックスタートを担当させてもらいましたが、
スタンプを押すたびに赤ちゃんの健康と真っ白なページの先に広がる
無限の可能性を願わずにはいられませんでした。
六十何年かの人生の第一歩を記録した私の母子手帳は、
望まれて生まれてきてその誕生を祝福された大切な証として、
私が生きている間は大切にしようと思います。