「このパスタ、うどんみたいにモチモチですね」そう言うと、
「食べものを食べもので例えないでよ」なんてツッコミが返ってくる。
実際、食レポにおいて”食べものを食べもので例える”ことは
タブーとされるようで、同じことをした人気お笑い芸人にいたっては
ニュースに取り上げられていた。
それでも夕方の特集では「この野菜、フルーツみたいに甘いです!」と
耳にする機会が多く、なんだか矛盾しているなー、と、思うことが多い。
誰かに伝えるためには、いかに馴染みのある言葉に置き換えるかが
重要なのだろう。食べものに関する本、それこそレシピ本などを読んでいると
特にそう感じる。
お菓子作りの本で「バターと小麦粉をサブラージュしてください」と
言われても正直ピンとこないし、本にある通り「粉チーズのようになるまで
擦り合わせてください」と例えられたほうが断然分かりやすい。
ただ、馴染みのある表現ではあるものの、
血の味を鉄に例えるのはなんだかリアリティに欠けているな、とも思う。
血は鉄の味という表現を使う何%の人たちが
本当に鉄の味を知っているのだろう?
友人からは「金属バットを持って運動した後の手に残るあの香り。それだよ」
と返答があり、味と香りは直結するという考えはなんとなく理解できた。
それこそ松茸やトリュフも香りこそが味のような気がする。
それでも検索をすれば鉄を使用したアイスなどを見つけられるし、
気になって買ってみたりもした。
ただこうやって、とりとめのないことに対して、聞いて、検索して、買って、
食べてなんて行動に移す人は少ない気がしている。
結局、本当に知らなくても表現次第で伝えられるものはあるし、
例えられても分からないからこそ興味をそそるものもある。
食レポは本当に難しいもので、言葉の引き出しが多い人は凄いなぁ、と、
誰かに伝えることを仕事にしている人たちを見て感心する。
■関連資料
『アンソロジー カレーライス!!』須田 敦子著
請求記号 : 914.6/ア 資料コード : 611582760