タイトル:海街diary
監督:是枝裕和
原作:吉田秋生
出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、樹木希林 他
資料コード:630217982他
請求記号:D7AF/ウ
何度も何度も繰り返して見る映画がいくつかあります。
そのうちのひとつがこの作品です。
主に鎌倉を舞台にした四女だけ異母の四人姉妹の物語。
最初に出会ったのは原作漫画の方でした。
吉田秋生さんの作品には凛とした佇まいの美しい人物がいて、しびれます。
この作品では長女幸(さち)です。
映画でもそれは変わらず、長女としての責任感、娘である甘え、
恋人としての切なさ、看護師として人を見る視点。
全方向から立ち上がってくる彼女が実在する人のようにも感じられます。
四人姉妹の次女は自由奔放なようでいて、人に注ぐ目が優しく誠実で
そのギャップに惚れてしまうし、長らく末っ子だった三女は気楽に
生きているようでいて、でもどこか寂しそうなのが気になるし、
四女は自分の存在への悩みを抱きつつも元気いっぱいのサッカー少女で。
迷い傷つきながらも各々がさまざまな役割を担う姿を見て
人が人の中で生きるということの大変さについて改めて考えさせられます。
平野啓一郎著の『私(わたし)とは何か』という本の
「たった一つの「本当の自分」など存在しない。裏返して言うならば、
対人関係ごとに見せる複数の顔が、すべて「本当の自分」である。」
という一節を思い起こすのです。
海街では実家を思い出させる古い家らしさも魅力です。
柱に記した姉妹の身長の記録、縁側での梅仕事、今年の梅酒、
亡くなった祖母の梅酒。庭の花一輪を飾った仏壇、浴衣と花火、扇風機、
虫の出るお風呂場。生活すること、生きていることの確かさが
画面のそこここにあって懐かしく、実家に帰れないコロナ禍の
慰めともなりました。
そしてタイトル通り「海街」の海。朝帰りの道の横にも波は
打ち寄せているし、浜に降りる段々で恋人に別れを告げる時も、
足先を濡らして遊ぶ波打際も、山の上から見る小さくて大きな海も。
海は姉妹のすぐそばにいて、聞こえていてもいなくても波音は常に
しているのです。
ここではないどこかに行きたいと思う時、それが叶わない時に
映画の世界に行ってみるのもいいものです。
<原作>
タイトル:海街diary
著者:吉田秋生
出版社:小学館
資料コード:550050434他
請求記号:Y726.1/ヨ
タイトル:私(わたし)とは何か
著者:平野啓一郎
出版社:講談社
資料コード:611543903
請求記号:914.6/ヒ