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2018/12/02

母と寅さんと江戸川と

Tweet ThisSend to Facebook | by 図書館管理者

昨年の夏、老母が墨田区の押上の近くに住処を移しました。

ひと月に2、3回は顔を見に行くようにしていますが、
母は年ごとにどんどんわけがわからなくなり、
体調も機嫌も良くないことが多くなりました。
悲しくもあり、腹立たしくもあり、帰る頃にはいつもどっと疲れています。
自身で介護などをなさっている方からすれば、
なに甘ったれたこと言ってんだと殴りたくなるような言い草でしょうが、
なんか気分の変わることでもしないとやりきれんわ!と思うこともしばしば。

それで、よく帰りに上野の博物館などに寄り道したりしています。

先日は行きの京成線の電車の中で路線図をぼーっと眺めていたら、
「今日は帰りに柴又の帝釈天に寄ってみようか」と思いつきました。
ちょうど『男はつらいよ』の寅さんが主人公の小説を読んでいるところなので、そのせいで、
今までスルーしていた路線図の中の「柴又」の文字が目に留まったものと思われます。
我ながら単純。


柴又駅は映画で見た通りの小さな駅でした。
帝釈天の参道は映画で見て想像していたより幅が狭くて、でも想像していたよりも長かった。
お団子屋さん、お煎餅屋さん、昔ながらのお蕎麦屋さんと鰻屋さん。
気分が沈んでいたはずが、なんだかウキウキしてきます。
やっぱり単純です。

自分みやげのお団子買って帰ろうかなどと考えつつ、まずはお参りしてからねと山門をくぐれば、

わあ~、立派なお寺だー。

境内は想像していたほど広くはなかったけれど、ゲンちゃんを従えた御前様が
今にも静々と現れそうな雰囲気は映画そのままです。
ではお賽銭をと小銭入れを開けたらば、ありゃ。1円玉が3つしかない。

「…」

さすがに逡巡しましたが、ま、気持ちの問題だからとこそっと投げ入れてお参り。
どうか帝釈天様に「けっちくさー!」と思われませんように。


せっかく来たのだから矢切の渡しも見てみたいと、駅とは反対側の江戸川に向かいました。
小説の中で少年の日の寅さんが江戸川で釣った鰻を売りに来たという
老舗のお料理屋さんの横を通り過ぎると、そこは江戸川の広々とした河原。
映画ではこの土手の草の上に寅さんが寝そべってたなあ。

渡しを遠目に見ながらちょっと歩くと、「JR金町駅まで1600m」という道しるべがありました。
…ふむ。帰りの電車のことを考えると、柴又駅に戻るよりも金町駅まで行っちゃった方が、
乗り換えがなくてめんどくさくないのです。
となれば、このままずっと江戸川堤を歩いて行きたくなりました。
元々私は水を見ながらぶらぶら歩くのが好きなのです。


同じ川でも、我が家から近くて見慣れた多摩川とはだいぶ違う景色を目にしたせいでしょうか、
唐突に思い出したことがあります。

私の通っていた中学ではウォーキング遠足とでも称すべき行事があって、
毎年秋に江戸川べりを延々何キロも歩いていました。
学校から近いわけでもないのになぜ江戸川だったのかは謎です。
どの辺を歩いたかもよく覚えていませんが、たぶんもっと上流の方だったのでしょう。
学校行事も運動も嫌いな私ですが、歩くのは好きだったので(それに水辺だし、)
これだけはたいそう楽しかったのでした。なのにすっかり忘れてた。
何十年ぶりかの江戸川ウォーキング遠足。
日当たりの良い土手に季節はずれのホトケノザの花がたくさん咲いているのを見ながら歩きました。


母との会話(のようなもの)。
「ねえお母さん、今日はこれから柴又の帝釈天に行ってみようかと思うんだ。
ここから近いんだよ、知ってた?」

「……」

「お母さん、寅さん好きでしょ?」。
昔、何度か一緒に映画を見に行ったこともありました。

「………」

「でも帝釈天には行ったことなかったね」

「…………」

「暖かくなったらお花見がてら行けるといいねぇ。車椅子ででもさ」。
まあ実際にはとても無理でしょうが、お愛想でこんなことを言ってみたりもします。

「…………………」。一切反応なし。

……あのね、お母さん。柴又いいところだったよ。
帝釈天にお参りしたよ、3円分ね。


読んでいるのは、
『悪童(ワルガキ) 小説寅次郎の告白』 山田洋次著 913.6/ヤ
寅さんの生い立ちが、寅さん自身の口から語られます。
とーっても面白いです。寅さんファンのみなさま、ぜひご一読を!


そして。

しまった!帝釈天に戻らなかったから、お団子買いそびれちゃった‼


11:00