私にとって旅の大きな楽しみの一つは、お酒を飲むこと。
宿泊しているホテルのバーで寛ぐのも素敵だけれど、地元のお店に入ってみると、観光とはまた違った感覚でその土地と触れ合えるような気がします。たまにお店選びに失敗してしまうこともあるけれど(観光客ばかりだったり、常連さんばかりの渋すぎるお店だったり)、たいていは、旅行中だという緊張が解けていくような、ぜいたくで気持ちの良い時間を過ごすことができます。
さて、今回のチャレンジは『異国でローカル酒 in 台湾』。
いわゆる居酒屋的なお店は、台湾では『熱炒』と称される模様。普段は現地に到着してからのお店選びですが、今回はぜひ行ってみたい場所がありました。「世界入りにくい居酒屋」というTV番組で紹介されていた「阿才的店」です。
決行当日。道に迷いながらもなんとか到着すると、お店の前では何人かの男性達が、大きな(と聞こえる)声で輪になって喋りながらたばこを吸っています。おお!台湾って感じがする!その間をすり抜け、いざお店の中へ!
店内は何組かのグループ客で盛り上がっており、予想通り「いらっしゃいませ」的な声はなし。むう。どうしよう…と、横のテーブルにいた女性が、(おそらく)「上へ行け」みたいなことを指示してくれたので、それに従って階段を上に。階上に立っていたお兄さんに話しかけるもあっさりスルー。あ、お客さんでしたか…。
ようやくお店のお母さんを見つけ、たどたどしい英語と身振りで2名であることを伝え着席。ネット情報によると、ビールははじっこにある冷蔵庫から自分で持ってくるシステムだったはず。いいんだよね?とキョロキョロしながらビールを取り出し、まずは乾杯!
暑い中散々歩き回った体に、台湾のすっきりとしたビールはするすると染み込んでいきます。お酒を飲み始めてしまえばもう無問題。日本語の説明があるメニューから料理をチョイスし、その後は大いに台湾の夜を満喫しました。
料理はどれもおいしくて、女2人なのでたくさん食べられないのが残念。1987年にオープンしたという店内には古い映画のポスターや家具などが置かれ、ノスタルジックな雰囲気が漂います。民主化運動の際には、運動家が集まる場所としても知られていたそうで、街の中とは異なる台湾の歴史とたくましさの一端に、ほんの少しだけ触れられたような夜でした。
たぶん一言も声を発しなかったお母さんは、お会計を少しおまけしてくれました。そして、謝謝、という私たちにニヤリと笑い、気のせいか?と思うくらいほんの少しだけ手を振ると、すぐにまたむっつりと仕事に戻っていきました。
おいしいごはんとおいしいお酒。ゆるりとした何物にも代えられない時間。
再見!
★関連資料:『世界入りにくい居酒屋 異国の絶品グルメ図鑑』611831631、673.9/ニ
『an・an』2017年4月12日号 620475858、書庫