タイトル:からだは星からできている
著者:佐治晴夫
出版社:春秋社
資料コード:611122670
請求記号:440.4/サ
なんだかついてないなあ。しんどいなあと思う時、
たいてい私の頭の中は私(自分)で一杯になっています。
それを知るのはこんな本を読んだ時です。
著者の佐治晴夫さんは理学博士で、元NASA客員研究員で、
数学、物理、宇宙創生理論、「ゆらぎ」研究その他にもたくさんの
科学の仕事をされている方です。理数が苦手な私には途方もなく
遠い存在ですが、一つだけ共通点があります。それは詩歌が好きなこと。
この本の中にも金子みすゞ、まどみちお、宮沢賢治、正岡子規
他にもたくさんの詩歌が引用されていて、こちら側への翻訳の役目も
してくれています。
私はこの本を一気読みすることが出来ません。
なぜなら読んでいるうちに心が宇宙に吸われて飛んでいってしまうからです。
遠い昔に教科書で習った石川啄木の
「不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸われし 十五の心」(※)
の感じです。吸われていっちゃうのです。
また宇宙から戻って読み始めると、今度はたくさんの思考が押し寄せてきます。
例えば佐治さんがボイジャーに搭載することを提案した
J・S・バッハの「平均律クラヴィア曲集」第一巻、
第一番の「プレリュード」ってどんな曲だっけ?図書館にCDあるか
検索してみよう。表紙はその楽譜なんだ!これが幾何学的って?むむむ。
サン=デグジュペリの『星の王子さま』ももう一度読んでみようかな。
ブッダの「慈悲」って“寄り添う”っていうことなのか。
大変な難しいことに感じるけど、金子みすゞさんはそのことを
知っていたんだなあ。宝石のような真昼の星を見てみたいな、などなど。
そして頭の中が自分で一杯な状態から宇宙や音楽や詩歌の世界に飛んでいく時、
自分が宇宙を構成する小さな一部であると知る時、自分を悩ませる問題は
少しも変わっていないのにふわっと気持ちが軽くなるような気がするのです。
なぜなんでしょう?佐治さんなら公式を書いて表してくれるでしょうか。
それともぴったりの詩歌を教えてくれるでしょうか。
稲城の冬、空気が冷たく澄んで星の瞬きが美しい仕事の帰り道に
私は佐治さんという巨人の肩に乗ってそんなことを考えています。
<参考資料>
CDタイトル:
バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第2巻(抜粋)著者:グレン・グールド
出版社:ソニーミュージックE
資料コード:630015557
請求記号:C7CQ/バ/オレンジ
(※)タイトル:
一握の砂 悲しき玩具著者:石川啄木
出版社:岩波書店
資料コード:610308838
請求記号:Y911/イ