職場は徒歩圏、通常移動手段は車という私はあまり電車に乗ることもないのですが、
その少ないチャンスで楽しみにしているのは、読書人ウォッチングです。
一時期、電車でコミック雑誌が読まれているのをよく目にしたものですが、
数年前からほとんど見かけなくなりました。
それに代わって増えてきたのが、ラインをしたりゲームをする人の姿。
それに対し、熱心に読書している人の数は多くはないものの、
一定数を保っているような気がします。
腰かけて、あるいは立ったまま、周囲の喧騒に惑わされることなく
本に没頭している姿は凛としていて、ある種修行僧のようないで立ち。
さあ、とカバンから本を取り出すしぐさ、
続きはどこからとしおり(ひも)を確かめるしぐさ、
ああ、そろそろ降りる駅だと本をたたむしぐさ、
それぞれが美しく行われるのにも見とれてしまいます。
「そんなに夢中になれる本ってどんな本?」
声をかけることはもちろんできませんから、知りたい気持ちをぐっとこらえます。
また、登下校時の電車では、重そうなランドセルを背負ったまま
青い鳥文庫などの児童書に夢中になっている小学生もたくさん見かけ、
あなたのような子供がいてくれるのなら、日本の将来もまだまだ大丈夫ね、
と根拠もなく嬉しくなってしまいます。
電車で見かける本には図書館のラベルがついているものも少なくありません。
京王線沿線では「稲城市」の他に「八王子市」「多摩市」「調布市」がおなじみ。
山手線内では「杉並区」「中央区」中には埼玉県のものなど、
様々な図書館ラベルを見るのも楽しいものです。
先日、使い込まれてツヤのある皮のブックカバーをお使いの、
お年を召したご婦人をお見かけしました。
てっきり個人所蔵の本と思いきや、日比谷駅に近づくと慣れた手つきで
本をカバンにおしまいになるその瞬間、見つけたのです!
本の地印に「稲城市立図書館」とあるのを!!
「図書館の本を丁寧に扱ってくださってありがとうございます。
あなたのような方が稲城の図書館を使ってくださることを誇りに思います」
と思わず心の中でつぶやいたのはいうまでもありません。
こんなうれしい出会いがある読書人ウォッチングは私の仕事のやりがいにもなっています。
図書館から借りられた本が今日も、誰かを夢中にしていると思うとわくわくしてしまいます。
また、私のように読書人ウォッチングをしないまでも、
読書にいそしむ人の姿にひかれて「あ、私も何か読んでみようかしら」
なんて思う人が生まれたらまた素敵だなと思ってしまうのです。
このように考えると、他の人を観察している場合ではないですね。
私も読書しよっと。