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 日曜日:9:00-17:00
 

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2019/11/01

『いとの森の家』

Tweet ThisSend to Facebook | by 図書館管理者

タイトル:いとの森の家
請求記号:913.6/ヒ
著者:東 直子
資料コード:611711025


3人姉妹の真ん中の小学4年生の女の子とその一家が、
糸島半島の付け根あたりに広がる田園地帯の丘の上に
引っ越したことから始まる物語。


それまで住んでいたのは福岡市内の団地。
周りはアスファルト舗装されおり、
田畑も歩いていける距離にはないような地方都市。
転居したのは、この土地を父が気に入って家を建てることになったためだ。

新学期早々ならまだしも、家の着工が遅れたせいで引っ越したのは6月。
新しい家、新しい学校、新しい友達、新しい生活。
今日から自分が生きていくのはここなのだと
周りになじんでいこうとする姿はとても健気だ。


例えば、初めて経験する集団登校。
ゴム長靴を履いて列の最後をついて歩く。
道端には6月のせいだろう、
車に轢かれたカエルの姿がたくさん・・・。
でも、誰も何も言わないで粛々と進むのを見て、
自分はこんなことではダメだと思う。

また、街からの転校生として珍しがられて、
朝食に何を食べているのかと聞かれ、
うっかり「メロン」と答えてしまい、
これからは毎日朝食にメロンを出してもらうよう頼むか、
こちらから先に友達を迎えに行くようにしようと決意するところ。

さらに、クラスでは「オケラ」をヤクルトの空容器に入れて
学校に持ってきて、休み時間にその虫のカマを広げた姿で
勝負をするという遊びをしているのを見て、
最初はとても驚くが、自分も友達と「オケラ」を見つけて
学校で勝負に参加してみるなど、
小学校4年生頃の子どもの生真面目さが
自分の小学校4年生頃の記憶にも重なり、とても懐かしい。

この女の子の周りをとりまく大人たちも彼女の心に大きな影響を持つ。

女の子が習っている習字教室の中津先生は、
たくさんの蔵書を生徒たちに貸し出してくれるし、
おすすめ本も紹介してくれる。
先生の夢は童話作家になること。


森の奥に住む「おハルさん」と呼ばれているおばあさんは、
たくさんのかわいいものを手作りしていて、
初めて訪れた時、刺繍のついたハンカチをくれ、
「子どもと猫は遠慮しなくていい」と言ってくれる。

彼女はアメリカに住んでいたこともあって、ケーキやクッキーも焼く。

おハルさんは、刑務所に慰問に行ったり死刑囚に手紙を書いたり、
身寄りのない彼らの遺骨を引き取ったりしている。
どうやら、いつもニコニコしているおハルさんだが、
その心には大きな影があるようだ。


おハルさんがやっていることをどう受け止めるか
戸惑う子供の面を持ちつつも、死刑囚の人たちと交流することで、
確かに今日生きていることをお互いに認めることを
大切にしたいおハルさんの気持ちを理解できる
大人の面も持ち始めている自分に気づかせてくれる。


この物語で一番心に残ったのは、親友となった同級生と将来何になるか
書いた作文を打ち明け合った場面。洋服を作る人になりたいと言った友人、
いろいろな人がいろんなことをして、いろいろ考えたことを書く人になりたいと言った主人公。

一番似合う洋服を作ることと、友人を主人公にして素敵な物語を書くことを約束し合う。
この二人の友情がこれからもずっと続いていくだろうこのシーンは心にあつく残る。

この宝石のような日々は、父の突然の広島への転勤で突然終わりを告げられてしまう。
たった一年の間だったが、その短さが残念な思いとともに、
読者にも一層の輝きと確かな時間となって静かに心に伝わってくる。


06:30