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2022/09/24

花のように

Tweet ThisSend to Facebook | by 図書館管理者
「きれいですね〜!」

電車の中でなんだか視線を感じるなと思っていたら、飛んできた言葉だ。
私にではないことはわかっている。それぐらいわかっている。
その言葉が向けられたのは私の持っているお花にだった。

日本人であればチラッと見て、ああ、お墓参りに行くのね、と分かる
菊の花中心の花束だ。ここより少し南のアジアかポリネシアの方だろうか。
温かく優しい瞳がそれは嬉しそうにお花を見つめている。

そして
「同じですね〜!」
と自分の巾着袋を出して見せてくださる。確かに同じ色をしている。

外国語が苦手な人あるあるかもしれない。
相手の方が一所懸命日本語で話してくださっているのに、
頭に浮かんだ英単語をかき集めて私の口から出たのは、
「イエス!イエロー!カラー!」
だった。穴があったら入りたい。そして永久に出てきたくない。

 「黄色ですね。同じ色ですね。好きですか?」
とあわてて言い直した。ニコニコと頷いていらっしゃる。

水切りをして一晩おいた花はとても元気で、
清らかな空気のようなものを放っている。この人の好きな色の花で
良かったなと嬉しくなる。

お花はすごいなと思う。

いつもの一番安いサービス花束の中からじっくり選んだひとつを持ち、
集合住宅の郵便受けを見ていた。後ろを通り過ぎた方にご挨拶をして
少ししてエレベーター前に来ると扉が開いている。
その方が開けて待っていてくださったのだ。

コロナ禍のこの2年半エレベーターでの同乗を避けるため、
特にお年寄りの方はさっと昇っていかれるか、
一台見送ってでも一人で乗ろうと予防に気をつけて
いらっしゃる方が多いので、少しびっくりした。
でも、そうだった。少し前はこんな風に自分も待ったり、
待っていただいたりしたと懐かしく思い出した。

その方もじっとお花を見ていらっしゃる。
「夏ってこんなに暑かったかしらね。去年もこんなに暑かった?」
「本当ですね。今年は特別暑いですよね。」

一緒にため息をつく。それがなんだか嬉しい。
2つ違う階のその日初めて会った方だった。

お花はすごいなと思う。人と人とをつないでくれる。

これは今より感染状況が収まって少しホッとしていた頃の出来事だけれども、
どちらもお花を持っていなかったら言葉を交わすことはなかったと思う。

「百花春至為誰開」(この花はいったい誰のために咲いているのか)
という禅語がある。花は無心に咲いているからこそ尊いのだ、
ということを古今東西さまざまな方が書かれてるが、
今手元にある本も分かりやすい。

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「私たちは花を見たときに、『キレイだな〜』と感じます。
見ているだけで楽しい気分になります。

でも、花は『みんなにキレイと思われなきゃ』
『みんなに楽しんでもらうのに、私はへとへとだわ』などと思って
咲いているわけではありません。

ただ勝手に咲いているだけです。私たちはそれを見て、
とても楽しい気持ちになるのです。」(※)

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こんな風に、花のように生きられたらいいなあ。

(※)タイトル:執着しないこと
   著者:アルボムッレ・スマナサーラ
   出版社:中経出版
   資料コード:611567478
   請求記号:184 /ス
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