蔵書検索


 
詳細検索
新着資料検索

利用方法
 

休館日

開館カレンダー


 中央 第四月曜日
 (祝日の場合は翌日)
 年末年始・特別整理期間
 第一
 第二
 第三
 第四
 月曜日
 祝日・年末年始
 特別整理期間
 iプラザ
 第二・第四月曜日
 (祝日の場合は翌日)
 年末年始・特別整理期間
 

開館時間

中央・iプラザ 9:00-20:00
第一~第四 10:00-17:00
*7月21日~8月31日 
 火~土曜日:9:00-18:00
 日曜日:9:00-17:00
 

iブラリブログ

スタッフコラム >> 記事詳細

2022/05/03

桜のはなし

Tweet ThisSend to Facebook | by 図書館管理者
4月上旬、長野県の富士見町というところに桜を見に行った。
東京のソメイヨシノは盛りを過ぎていた頃だが、富士見町は高地にあるので
桜の開花はかなり遅い。

余談だが「染井吉野」ってなんて綺麗な名前だろう、と毎年繰り返し思う。
染井村(現在の豊島区駒込)の植木職人が品種改良して作り出したことと、
古来より桜の名所である吉野山にちなんで「染井吉野」と
命名されたそうだが、もしこれが単純に「ソメイザクラ」とかだったら。
なんだか1割ぐらい魅力が減るような気がする。

染井吉野は全ての木が同じ遺伝子のクローンであるので
ほぼ同時に開花する、と言われる。この「同時に」が、
春が来た!感をもたらしてくれる素敵なところだ。
もし染井吉野がなかったら、東京の春は随分つまらないだろうと思う。

富士見町と私の住んでいる市とは友好都市の関係で、
その御縁で以前は市の保養所があり、子どもが小さい頃は
毎年夏休みごとに行っていた。

場所は高原なので、真夏でもカラっとして爽やかである。
「ここでひと夏過ごしたいよー!」と後ろ髪引かれながら東京に帰るのが
毎度のことだった。

懐かしいその保養所も何年か前に廃業してしまった。
涼しいだけでなく、落葉松林に囲まれた佇まいも私は大好きだったから
残念でたまらず、「ならばこの辺に別荘を建てるか。いや、
いっそ移住できないものか」と思いついた。

「気候の良い時しか知らないからそんな呑気なこと言えるんだよ」
という外野の声も聞こえてくるが、…はい、仰る通り。
夏涼しいということは、冬は寒いのだ。雪だってどっさり降るだろう。
なにせスキー場があるのだ。

だが、ということは、寒いのは確かだが冬のレジャーにこと欠かない
わけでもある。もっとも私はスキーには興味がない。
スキー場は私にとっては高ポイントでない。

問題は他にもある。高原の別荘地であるから近くに店などない。
路線バスの類もない。免許も車も持っていない身は相当の不便を覚悟する
必要がある。いやそれより何より、まず、生活費をどうする。
………………………………。

しかたがない。高原はあきらめて町の中心部に下りていくか。
標高差がかなりあるから高原と同じとはいかないだろうが、
東京よりは爽やかな夏だろう。

富士見駅周辺の中心部にはスーパーも病院も役場も、そして図書館もある。
あの立派な図書館で雇ってもらえないだろうか。
しかしそう都合よく空きがあるかな。いや、仮にあったとしたって
……………(てんてんてん)。
移住計画は妄想以前の段階で頓挫したままだ。

話は最初に戻る。お目当ての桜は富士見駅の一つ隣の駅
(「基本、電車移動。」なので、夫が運転してくれる時でも
「最寄り駅は…」という思考から抜け出せない)近くの古い観音堂の敷地に
立つ老木である。エドヒガンという種類の枝垂れ桜で、
近辺の桜はみなこの木の子孫だそうだ。

かつて作家の井伏鱒二氏が、桜を見るためにわざわざこの近くに
別荘を建てたという話も聞いた。ほーら、別荘…。うらやましいなぁ………。

桜マップを作ったり、桜を巡るウォーキングツアーを開催したりと、
町は桜を春の観光の目玉にしたいらしい。
あきらめきれない妄想を抱えた者がいそいそとやって来る。

実は去年もやって来たのだった。ドンピシャのタイミングで満開だった。
どっしりと風格ある老木が藁ぶき屋根とお地蔵さんを背景にして立っている。
お堂の戸が開いていて、中に古いひな人形が飾られているのが見える。
あたりはしんと静まり返っている。満開の枝垂れ桜。天から降る花のような。

「いい写真が撮れたらカレンダー作ろうかな」。
世にもつまらない台詞が口から出た。でも泣きそうになっていた。

その時に見た説明の案内板には、この桜は樹齢250年とあった。
今回はボランティアガイドの方にお話を聞いたのだが、
地元の長老の90歳のおじいさんが、子どもの頃父上に
「この木は250年にもなるのだから大切にしてやらなくてはいかん」と
何度も言い聞かされていたのだという。

案内板は新しく作り直されていて、「樹齢300年」になっていた。
老木の周りでは時間の流れも緩急自在になるのかもしれない。

あの夢のように美しい光景をまた見たくて去年と同じ日を選んで来たのに、
今年は全然咲いてなかった。つぼみもまだ固かった。自然相手は難しい。

ガイド氏によれば、去年は暖冬だったため例年より10日以上も
早く開花した由。そのせいか花の色もいつもより白っぽかった、
本当はもっと濃い紅色でそりゃあ華やかなんですよ、とのことだった。

白っぽくたって充分泣きそうだった。本来の花色で満開になったさまを見た
らきっとぎゃん泣きだろう。でも来年はぎゃん泣きしたいな。できるかな。

辛気くさいことを言うようだが、この頃
「来年も元気でまたこの花を見られますように」などとごく自然に
願ったりするようになった。ただしこの場合の「この花」とは、必ず桜である。

紫陽花だって大好きだが、「来年も元気でまたこの紫陽花を…」
という風には、まあ思わない。辛気くさい話がさらに横にそれて恐縮だが、
最近よく聞く「樹木葬」だって、桜なんじゃないだろうか。

サルスベリとかトウカエデとかの樹木葬って、…
ないわ~、と思ってしまう。よく知りもしないのに言うのはいけないが。

結論。桜ってやっぱり特別だ。
…と唐突に、そして無理やり終わらせるのだが、それにしても、
桜からついいろいろと連想し、余計な話が多過ぎた。

よってタイトル変更。
『桜の話をするつもりだったが、頭がとっ散らかって話題があちこち飛び、
収拾がつかなくなった件』。
05:30