宇佐見りんさんの芥川賞受賞作『推し、燃ゆ』を読んで、
ほう、今の若い方はこういった感覚の中を生きているのか、
と思っていたところ、まさか自分の身にも同じようなことが起きようとは。
推し、燃ゆ。
ここ最近、その方の音楽ばかりを聴き、口ずさみ、脳内で流し、
日々映像も見ていたので、しばし途方にくれました。
あまりの衝撃にしばらくは距離を置こうと思い、他の方の音楽を、
ということで、昔よく聴いていた音楽を引っ張り出し、聴くようになりました。
音楽の力とは素晴らしいものですね。一瞬で、当時のことが蘇ります。
その時、自分はどこにいたのか、日々何を思っていたのか、
歌の向こうから溢れてきます。
同じことが本でもいえると、よく感じます。
好きだった本を読み返すことで、当時の感覚が呼び覚まされます。
特に、児童書を読み返す機会がここの所多く、懐かしさと共に
感動を味わえます。
当時この本は、図書室のあの棚にあった、そうそう、こんな厚みと
装丁だったなど、ありありと思い出されるのです。
この文章の、この表現が好きだったというのもたくさん出てきて、
改めて幼い頃の記憶の強さを感じます。
時代の流れと共に、本の在り方も変わってきています。
私の幼い頃は、既にテレビゲームもあり、漫画もたくさん発売され、
テレビの録画もできる環境がありました。
今では、デジタル化により、動画もゲームもコミックも、
手に取りやすい状況です。
本が娯楽の主力であった時代とは、その役割が大きく違うことでしょう。
それこそ、少年少女文学全集全盛期の時代であったなら、
どれほど本への執着があったことか。
その感覚も知りたかったな、とほんの少し思います。
過ぎ去ってしまったものは取り戻せないのですが、
できるだけ感動は味わいたい。そう思い、今日も本に手を伸ばします。
好きなものは好きな時に、夢中になって向き合うのがよいのかもしれません。
未来において、それが自分の支えになることもあると思います。
【資料紹介】
『推し、燃ゆ』宇佐見りん
請求記号:913.6/ウ 資料コード:612172040
『少年少女のための文学全集があったころ』松村由利子
請求記号:909/マ 資料コード:611874880