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2021/09/03

長過ぎる。

Tweet ThisSend to Facebook | by 図書館管理者
以前、林の中の遊歩道を散策していたときの話。
ああいう場所でぼーっとしていると、地表に露出して盛り上がっている
木の根につまずいたりするから、なんとなく足元を気にしながら歩いていた。

するとふいに目先の地面がズレたような気がした。
「…?!」とよく見ると、根っこがずるずる這っていたのであった。

私は思わず「ひゃあああ!!」と悲鳴を上げて飛びのいた。
同時に「うわっっ!」と叫び声がして、横にいた夫が視界から消えた。
腰を抜かして尻もちをついたのかと思ったが、
なんとか踏みとどまったようだった。

根っこは、じゃなくてつまりその、実は、蛇だったわけだが、
ずるずる悠々と茂みの中に消えていった。

とっさのことでなにヘビだかはわからなかったが、
色・太さ長さとも根っこそっくりの蛇で、
突然動き出さなかったら踏んづけていたかもしれない。

危ないところだった。お互いに。

ところが、その同じ日にまた遭遇したのである。
通行人は少ないが車も通る普通の舗装道路である。
30メートルぐらい先のところでのびのびと伸びていた。

さっきは足元でいきなりだったから肝をつぶしたが、
今度は心の準備をする余裕があった。
恐る恐る近づくと、人間の気配がしたら逃げそうなものなのに、
道路わきの草むらに頭を突っ込んで伸びたままぴくりとも動かない。

「これ死んでるんじゃない?」
「いや、この色つやは生きてるよ」
夫は断言したが、やはり確かめてみたくなったらしく石を投げた。

言っとくが私は止めたのだ。だってもし石が当たっちゃったりしたら、
たとえ死んでたとしてもあとあとまで祟られそうではないか。

制止を振り切って投げられた石は、こん!とわりと大きな音を立てて
すぐ近くに落ちた。敵は微動だにせず。

「ほらやっぱり死んでるよ」
「いやいやいや」

三度投げた(結構しつこい)。
三個目の石が落ちたとたん、草むらからぬっと頭が出た。
同時にするすると体が引き寄せられ、あっという間にとぐろを巻いた。
鎌首をきっともたげてこっちを見ている。

再び「ひゃあああ!!」である。一目散に逃げた。
蛇も気持ちよく爆睡していた(たぶん)ところに
石など投げられて怒っただろうが、あんな無防備なところに
車が走って来たら、いかに素早くとも轢かれてぺちゃんこだろう。

「…やっぱり死んでなかったろ?
(なぜかドヤ顔)それに起こしてあげたんだから我々は親切だったんだよ」

「……………蛇がそう思って感謝してくれてればいいけどね」。
それに「我々」って言うな。
二の腕にちりちりといつまでも鳥肌が立っていた。

蛇とはつくづく不思議な生き物だと思う。
あの姿形で動けるというのがどうにも納得いかない。

まして泳げるとか(用水路で見たことがある)
木に登れるとか(植物園にて夫の目撃談)、木の枝から枝へ飛び移る
(これはテレビで見た)に至っては天の摂理に反しているとしか思えない。

そもそもなぜあんなに長い必要があるのだろう。
原初的・本能的な恐怖、もしくは畏怖を覚える。理屈じゃない。
その証拠に、猿も蛇を怖がるそうではないか。

なのに不思議なことに、いやだからこそ、か。
蛇は世界各地で神の使いだったり、神様そのものだったりする。

井の頭公園の中の弁天様の境内に、「宇賀神像」というのがある。
「宇賀神」とは人面蛇体の姿の神様で、作例としては、
極小サイズで弁財天像の頭上に載っている、
つまり弁天様の付属と言うか一部になっているものが多いが、
井の頭公園のは独立していてそれなりに大きい。

…と知って「それは捨て置けぬ」という気になり、
わざわざ見に行ったことがある。

かすかに笑みを湛えた老翁の顔にとぐろを巻いた蛇の体。
大変無気味…、もとい、インパクトのあるお姿で、
来た甲斐があったと満足したのだった。

ふだん、図書館のカウンターに『爬虫類図鑑』などの本が返却されると、
チラッとでも中を見てみないと気が済まない。我ながらどうしたことだろう。

…………私は実は蛇好きだったのだろうか。

でも。やっぱり蛇って長過ぎる。
05:30