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 日曜日:9:00-17:00
 

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2019/03/12

感想

Tweet ThisSend to Facebook | by 図書館管理者

幼い頃、私は口数が少なく、人見知りの激しい子供でした。

心配した母が、近くの公民館でやっている「読書会」という
親子サークルを見つけて、これならいけるか、と思ったのか
申し込んだことがありました。

その会は、講師による読み聞かせや、また、課題図書を事前に自分で読み、
会で感想を発表するという内容でした。

私はどちらかというと外で友だちとわいわい遊ぶより、
家で静かに本を読むことを好んでいたので、
読書会の参加は、案外嫌じゃないと思ったように記憶しています。


初参加の日は事前に読んでおく課題図書だったので、
家で読んでから出かけました。

どきどきしながら公民館に着くと、すぐに後悔しました。
静かな場面を想像していたのに、たくさんの子供たちが
力の限り机の周りを走り回って騒いでいるのです。

他にそんなに娯楽があった時代じゃないし、
イベントがあればほとんどの子供が集まるでしょう。


帰りたいなと思っているうちに会が始まりました。

講師が今回の課題図書を大まかに読み、
それから子供たち一人一人が感想を発表していきます。

発表に対して講師がコメントし、他の子供たちもその感想の感想を
言い合っていくスタイルのようです。

王さまが出てくる話だったので、ほとんどの子供が王さまに
関する感想でした。


そのうち私の番になりました。

「新しいお友達です。」

講師がみんなに私を紹介してから、
「感想はどうかな。」と聞いてきました。

私は真っ赤になりながら、言おうと思っていたことを
小さな声で言いました。

「目玉焼きの本当の食べ方が書いてあっておもしろかった。」


途端にやんちゃな男子たちが、おかしい、そんなの感想じゃない!
などとはやし立てたのです。

しかし、毎回のことなのか講師はひるまず、
「感想は何でもいいんだよ。思うことは自由なんだよ。」
と男子たちをなだめ、

「目玉焼きの食べ方教わってよかったね。」
と涙目の私に話しかけてくれました。

初めて家族以外の人に認めてもらい、目玉焼きのこと言えて良かった、
とうれしくなったことを覚えています。


今考えるとなんでこの感想?と思いますが、
幼い私はいたって真剣でした。

その本には、王さまが食べる目玉焼きの本式な食べ方が書いてあるのです。

いつも食べている目玉焼きに食べ方があるなんて、
さすがは王さまだ!と、その点に非常に興味を惹かれたのです。
(もちろん作者の中での本式な食べ方だと思います。)

当時、寺村輝夫さんの本が大好きで、絵本や王さまシリーズを
よく読んでいました。

その中の一冊がこの課題図書だったのでうれしくて
参加したようなものでした。


その後、本と同じ目玉焼きを母に作ってもらい、
本と同じように正しい食べ方で食べてみました。

それはそれはおいしくて、王さまになったような気分でした。
その日以来、寺村さん流の食べ方を今も続けています。


読書会にはその後も通い続け、母の目論見どおり、
いつの間にか人見知りはなくなりました。

その代わり、文章の中に妙なところを探し出す私のアンテナが、
よりいっそう磨かれて成長していったように思います。

良いのか、良くないのか、それが問題です。



●参考資料:
『魔法使いのチョモチョモ』 寺村 輝夫/作 和歌山 静子/画 
フォア文庫 理論社
(図書館資料コード:610572070 他)


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