タイトル:『短歌ください 君の抜け殻篇』
著者:穂村弘
資料コード:611845127
請求記号:911.1/ホ
昔私の通う学校に、歌人の穂村弘さんが講演をしに来てくださったことがありました。
とても楽しく、興味深い講演でしたが、
その中でも一番印象に残っている言葉が“キニキリームキロッキ”です。
「カニクリームコロッケはカ行の中でキだけ使われない。キがかわいそう。」
という気持ちから生まれた言葉だそうで、
聞いた瞬間に「これは一生忘れることが出来ないな」と感じました。
しかし創作者は穂村さんではなく、10代の女の子です。
ネットサーフィンをしている時に、SNSで見つけた、
ある匿名の女の子のつぶやきなのだとおっしゃっていました。
そんな風に、穂村さんは普段何気なく見逃してしまうような、
小さな輝きを掬うのがとても上手な方です。
現在、穂村さんは雑誌「ダ・ヴィンチ」にて「短歌ください」というコーナーを連載しています。
毎回違うテーマで一般の方から短歌を募集し、
その中からいくつかの作品が選ばれ、穂村さんの解説を添えて掲載されます。
そのコーナーをまとめた本の第三弾が『短歌ください 君の抜け殻篇』です。
短歌は音数が決まっているので、5・7・5・7・7の限られた音数の中で
いかに世界を作り上げるかが肝になります。
私が短歌を詠んでみようと思ってもなかなか上手くいきませんが、
この本にある一般の方々の短歌を読むと、
世の中には感性や表現力の優れた人がたくさんいるんだなぁと知ることができます。
もし理解するのが難しい作品があっても、穂村さんの解説を読めば、
きっと歌の意味や世界観に納得できるはずです。
ひとつひとつの短歌はもちろん素敵ですが、
的確でユーモアのある優しい穂村さんの解説が素晴らしいです。
また、現在個人で歌集を出していらっしゃる方の歌も載っていて、
ここがスタートだったのかなと感じることもできます。
短歌はいろいろな人の頭の中を覗き見している気分になります。
歌によってクスッと笑えたり、不気味だったり、共感できたり、
懐かしくなったり、さまざまです。
テーマには「本」や「昭和」、「ぬるぬる」など身近で
分かりやすいものが使われているので、馴染みやすい本になっています。
短歌に触れたことのない方にもおすすめです。