タイトル:『あの家に暮らす4人の女』
著者:三浦しをん
資料コード:611767174
請求記号:913.6/ミ
杉並の善福寺川近く、古い洋館に住む母娘と、一年前に加わって住むことになった女性2人の物語。
旧家の一人娘で育ち、デパートをこよなく愛す母鶴代、刺繍作家の娘佐知、
通信簿に『淡々として冷静ですが、粘りに欠けています』と書かれ続けてきた同居人の雪乃、
別れたダメンズ恋人にストーカーされているもう一人の同居人の多恵美。
女性4人の暮らしは大家と店子の関係とも、シェアハウスとも少し異なるけれど、
当番制で食事を作ったり、鶴代の菜園作業を手伝ったりと助け合いながらも
干渉しすぎない距離感で穏やかに続いている。
しかし、ある日、「開かずの間」を開けたところから物語は動き始め・・・
この物語では、烏が人の代わりに語ったり、亡くなった人の想いが置物を動かしたりと、
いきなりファンタジー的な要素があらわれてとまどったりしますが、
読み終えてみると何か目に見えないものに守られている4人の暮らしが
微笑ましく、うらやましく思えます。
また、佐知と雪乃は2人とも37歳独身。
病気や老いへの不安や恋愛観を語り合うガールズトークには共感を超えて、
自分の中で長い間文字にならずモヤモヤ抱えていた思いを
一気に言語化して吐き出してもらえたような思いがしました。
(私が読書する理由はこういうところにあるのかも)
物語の中で、谷崎潤一郎著『細雪』の4人姉妹の名前が「鶴子」「幸子」「雪子」「妙子」で、
丁度自分たちと同じというセリフがあります。
遠く学生時代に読んで「・・・」でしたが、もう一度読み直してみるきっかけをもらえました。