友人は、鎌倉のドーナツ屋さんで迎えてくれました。
「どうぞゆっくりと~」
その日、友人は店主を務めていました。
といっても、売るのはドーナツではありません。
古本です。
ドーナツ屋さんのスペースを借りて、小さな小さな古本屋さんが、
いくつか開かれていたのです。
一日限りの開催とあって、かなり盛況のようでした。
さて、友人はどんな本を選んだのかと見てみると、らしいな、
と感じられるものが多くて、面白かったです。
これは、好きって言っていた作家さんの本だ。
こっちは、この間、読んだって言っていた本。
あ、私と同じ本好きだったんだ。
こんな本も読むとは!
小さなテーブルの上に、友人の、今までとらえることの出来ていなかった部分が、
見える形になって出現してきたようでした。
どれを購入しようかと眺めているうちに、ふと、
でもこれはもう「手放してもいい」と思えたもので構築されているのだな、と気づきました。
友人が売っていたものは、基本的に、所蔵していたものだそうです。
自分の本棚と心を整理して、選ばれたものたち。
この本を超えてきて、今があるのでしょう。
長い付き合いのある友人が店主だからこそ、味わえたものです。
(ちなみに、ドーナツもおいしく味わってきました)
さて、悩んだ末に、なんとか本を選び取ることが出来ました。
読むことで、私の過去にもなってゆきます。
本で繋がるということは、物体を手渡す以上の繋がりがあるのかもしれません。
古本屋さんには、誰かの過去との出会いも潜んでいるのですね。
そんな楽しみを覚えつつ、先日、稲城長沼高架下で開かれた古本市にも行ってきました。
こちらは、小さなお子様向けの催しや絵本も充実している、ゆったりとした雰囲気の古本市でした。
どこかのお子様が読んできたであろう本も、多数。
誰かの過去が、誰かの今に繋がって、また過去になってゆく。
そんな場所が、地域に、生活にたくさんあります。
図書館だってそうです。
静かにする場所だけど、それはもう驚くくらい、たくさんの言葉が
バトンパスされ続きています。誰かから誰かへと。
図書館ではバトン走者を大募集中です。
みなさんも、お好きなバトンを手に、走ってみてはいかがでしょうか。